第629話
ミミウの精霊的剛腕にて吹っ飛ばされたノギスにポーションを渡して、アシュラ君を回収しようとする。
「はっ!あれ兄貴?川の向こうで手を振っていた、じいちゃんはどこに!?」
お、おうノギス君。
少し遠い場所に行ってたみたいだね。
「お前はミミウに吹っ飛ばされたんだ。魔道具ごとな。」
「はっ!すんません兄貴!兄貴から預かった魔道具を壊してしまって!」
いや、大丈夫だ。
ミミウと模擬戦するってなった時点で壊れる気はしてたから。
「ああ!オーパーツが!今のこの時代の魔法形態では作る事が出来ないと思われる貴重な魔道具が粉々に!」
後ろから走ってきた卓が地面に膝をついて、壊れたアシュラ君を拾い集めている。
「マルコイさん!いいんですか!?こんな希少な魔道具が壊れてしまったんですよ!くっつけたらどうにかなりませんか?ああ!風で飛ばされていく〜!」
風に乗った小さな木片を追いかけて走っていく卓。
え、えっと‥
じゃじゃーん!
「『どっからでもかかってこいアシュラ君』〜!」
ふむ。
何故か頭の中に未来型のロボットが浮かんできた‥
これも誰かの異世界の知識だろうか‥
「なっ!こんな希少な魔道具を2つも!凄い、凄すぎるよマルコイさん!」
卓の足はガクブルしている。
あばばばのトラウマよりも、自身の探究心が勝ったってところかな。
「この魔道具は俺の作った魔道具だからな。今はこれしかないけど、まだまだ量産するつもりだぞ。」
「‥‥‥っ!?」
卓は驚愕のあまり口を開けて固まっている。
「この魔道具を卓にやるからさ。卓のスキルを俺に模倣させてくれないか?」
頼めばさせてくれるだろうけど、ここまで俺の魔道具に興味を持っているんだ。
一台くらい報酬としてあげてもいいかな。
「そ、そんな作ったマルコイさんが、魔道具で俺がスキルを報酬になる!?」
いや、意味がわからんぞ。
「そ、そんな事でいいんですか?僕には全くデメリットがないですよ!」
「いいんだよ。多分魔道具を渡したとしても俺にはメリットの方が高いからな。」
スキル【賢者】を模倣する事で、こちらの世界に来る前に得た卓の知識も手に入れる事ができる。
この魔道具愛好者なら此方の世界で使えそうな知識をたんまり持っているのではないだろうか?
現時点では使う機会がないかもしれないが、先の魔王軍との戦いを考えると必要な知識だろう。
俺と卓は模倣を行うために、家に戻った。
「ノギス!再戦しましょう!ほら正人も準備して!」
「え?あやめはさっきやったじゃない。ミミウがと模擬戦したんだから、次はわたしとよね?」
「リルまってる‥」
「ちょ、ちょっと待ってください!魔道具壊れたんすよ!俺丸腰っす!」
「大丈夫よ!ノギスさんなら問題ないわ!理由はないけど!」
「え、えぇ‥」
ノギスが告げられている死刑宣告を聞きながら‥
ノギスよ。
死んでなかったらポーションがあるから大丈夫だ。
あとくれぐれも爆殺女神だけは選ぶなよ‥
爆殺女神を選んだ場合は助けれないかもしれないからな‥
「それじゃあまずは卓のギルドカードを見せてもらっていいか?」
「はい!どうぞ!」
ガクブルしながらギルドカードを提示する卓。
カードが震えていて読みづらい‥
いい加減慣れてくれないかな?
荒業時でもう一回くらいあばばばしたら治るかな?
財前 卓
冒険者ランクE
スキル【賢者Lv.6】【属性魔法:地水火風Lv.5】【異世界の知識】
さすが賢者。
まさか光と闇以外の属性魔法を使えるスキルとは思わなかった。
「それじゃあ卓。自分のスキル名を宣言した後に、魔法を使ってもらっていいか?」
「わかりました。僕のスキルは【賢者】【属性魔法:地水火風】と【異世界の知識】になります。」
そして卓はその場で魔法を唱える。
「我が視界を照らせ『光球』」
熱を持たない火属性の魔法による辺りを照らす魔法だ。
(ピコーンッ)
『模倣スキルを発現しました‥』
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