第613話

もう!


いつもの事だからわかるでしょうがクワイスさん!


「だから帝国をぶっ潰しに行こうって。」


「いや、さっきより言い方が物騒になってないか?」


クワイスの額に一筋の汗が流れる。


「マルコイさん‥わかっている。わかっているが、一応聞かせてもらう。本気かな?」


「当たり前じゃないか!一緒に帝国を滅亡させてやろうぜ!」


「いや、もう発想が魔王なんだけど‥すまないが、最初から説明してもらってもいいかな?」


むう。


やはり傭兵団の団長、手強い‥


俺は事の顛末をクワイスに伝えた。






「なるほどね。そんな事になってたわけか。側から見ると全くそんな事気づかなかったよ。わかった。マルコイさんには返しきれない程の借りがあるからな。手伝うのは吝かではないんだが、流石に一国相手に俺たちが手を貸したところでどうにかなるとは思えな‥」


俺が笑みを浮かべている事に気づいたクワイスは頭を抱える。


「はぁ‥もしかして今回もマルコイ印の魔道具を使って参戦するわけ?」


「さすがクワイス。話がわかってるね。あと1か月あるからな、俺ができる限り魔道具の準備をするから、それを使って参戦してほしい。」


「うぐぐぐ‥参加するのは?」


「もちろん『アウローラ』と『ガルベスト』のみなさんです。」


「はぁ、よかった。頭抱えるのが俺だけじゃなくて。」


クワイスよ残念だったな。


多分スネタさんは少し変だから、頭を抱える事はないぞ。

そして兄さんも難しいことは深く考えないからな。


結果頭を抱えるのはクワイスだけだと思うぞ。


「わかったよ。拒否権はないというか、拒否するつもりもないからな。マルコイさんの頼みは受けさせてもらうつもりだしな。しかしモンスターの氾濫はなんとか納得したが、今度は国を相手するのか‥」


「あ、国を相手するのは基本は神聖国の騎士団だぞ。多分帝国兵も相手する事にはなると思うけど、クワイスたちが相手にしてほしいのは、主に魔族とモンスターだ。」


「はいはい‥は?モ、モンスターはわかるけど、魔族もかい?魔族は勇者じゃないと相手できないんじゃないのか?」


「そうなってるけどね。これについては俺に考えがあるんだ。だから魔道具の仕上がりを楽しみにしといてくれ。」


「楽しみではないんだけど‥まあいい、マルコイさんを信じてるからな。」


うむ。

少し気恥ずかしいぞ。


「それじゃあ俺は『ガルベスト』に声かけてくるから。スキャンとライリーにも声かけといてくれ。」


「わかった。ライリーはともかく、スキャンは喜びそうだな。ゴーレムの扱いがまた上手くなってて、早く実戦したいとか言ってたしな。」


それは心強い。

ライリーもちゃんと魔道具のパワーアップしておくかな。

服は破けるけどね。







『ガルベスト』の元へ向かうために、俺はエルエス兄さんに渡した『投げてどっかん凄いぞ君』の魔力を目指して転移する。

名前あってたかな‥?


転移した先は雑貨屋さんのようだった。


「でさ。俺の判断がばっちりでモンスターの後ろに回り込む事ができたん‥どうしたの」


エルエス兄さんが話しかけている雑貨屋さんの店員のお姉さんと目が合った。


こっちを指差してプルプルしてる。


「ん?どうしたんだよ。後ろに何かいるのか?」


そう言って振り返ったエルエス兄さんと目が合う。


エルエス兄さんは前に向き直した後に、再度こちらを見る。


何回見ても変わりませんよ。



「やあ兄さん。ちょっといいかな?」


「キ、キャー!しゃべったぁ!」


プルプルしてた女性が俺を見て大きな声を上げる。


そりゃ喋りますよ。


「はぁ‥マルコイ‥いきなりはやめてくれ。何か大事なものが口から出そうだったぞ‥」


それは大変だ!

何が原因だ?

病気か?


「ごめんね、もう少し話したかったけど、弟が厄介事を持って来たから帰らないと。また今度来るよ。」


エルエス兄さんは口を開けたままプルプルしている女性に声をかけて立ち上がった。


「どうせ此処じゃ話しにくい内容だろ?拠点に移動しよう。」


さすがエルエス兄さん。

わかってるね!

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