第609話

これだけあったら大型の魔道具だったり作り放題だ。


来るべき魔王との戦いのために様々な魔道具を作る必要がある。


遠距離攻撃できる魔道具や、身を守る魔道具‥


少しでもみんなの生存率を上げるためには必要な事だ‥


何作ろっかなぁ!


銃を大きくしたやつとか?

異世界にあった自動で動く箱みたいなやつもいいなぁ。


みんなが楽しみに‥間違えた、心待ちにして待ってるんだ。


俺はみんなの顔を思いながら、台座から魔力回路を剥がし取る。


あれ?

何故かクワイスとかラケッツに魔道具を渡した時の顔を思い返すと、泣きそうな顔なのは何でだろう?


泣くほど嬉しかったんだろうな!


いやぁ、これだけの魔力回路を作ろうと思ったら、現存する魔道具士が頑張っても数百年かかるくらいの量だ。


節約せずに使い倒す事ができるぞ!


剥がす量が多いので、途中から黒曜石ごと『スペース』に入れていく。


もしかしたら、黒曜石を使ってるのも意味があるかもしれないし、拾える物は全て貰ってしまおう。


ここに置いていても宝の持ち腐れだからな!


全ての魔力回路と採れるだけの黒曜石を『スペース』に詰め込んだ。





そして部屋から出ようとした時に、一枚の石板が目に入る。


そこには名前が刻まれているようだった。



『イソズミ マサト  ザイゼン スグル  キトウ アヤメ  イチノセ メグミ‥』


これは今まで召喚された人たちの名前か?


『アモウ ハヤト  ミタライ ワカ  ゴウリキ ツヨシ‥』


30人程いる。

これだけの人が異世界から無理やり連れて来られて、殺されたかもしれないと思うとやはり胸が痛い。


女神様の神殿を壊した事は申し訳なかったが、正人たちだけでも救えてよかった。


『‥‥タナカ タロウ‥』


全員の名前を確認して、石板に頭を下げ部屋を出て行った‥







帰る途中、また女神像の前で立ち止まった。


ここが聖地扱いなら、撤去されたり壊されたりする事はないのだろうが、この女神像を崇めに来る人はいないと思ったからだ。


もしそうだとしたらこの女神像は俺が最後の参拝者になるかもしれないって事だ。


だとしたら、ちゃんと女神様に御供物でもしていくべきだと思ったからだ。


出来るだけ俺に過度な期待はしないでくれるようにとの願いも込めて‥






『スペース』から様々な物を取り出す。


保存用にとっていた料理や装飾品などを女神像の前に置いていく。



そしてタルタルソースのたっぷりかかったチキン南蛮を置いた時にその異変は起こった。



女神像が‥


光った‥


「ぬがっ!」


側にいて、その光を直視してしまった。

これって失明レベルではないだろうか‥


エンチャント:水を使って目の痛みを癒す。


な、なんなんだ一体。


チキン南蛮が原因なのか?


いや、まさかタルタルソースだったりして‥


「ぬがあっ!」


また光りやがった!


目ん玉焼けたかと思った!


エンチャント:活水を使って焼けかかった目を癒す。


なんなんだよ。


タルタルソース置いたから怒った?


だったらチキン南蛮を引けばいいのかな‥


チキン南蛮を下げようと手を伸ばすと、また光った。


今度は光るかもと思って手で光を防いでいたから大丈夫だ。


そう何度も引っかかるもの‥


「ぬがあぐっ!」


手を顔から外したら光った。


も、もういい。

わかったから‥


引いてもダメって事か。


なら増やしたらどうだろう‥?


『スペース』に入っていた俺のご飯用にとっておいたチキン南蛮をタルタルソースマシマシで女神像の前に置く。


すると今度は淡い光で点滅し出した。


正解って事でいいんだろうけど‥





さ、さっきまでの威厳はどこいった?


タルタルソースを食べたい女神様ってどういう事?


淡い光をずっと点滅させてるんだけど、これって放っておいていいのかね?


とりあえず『スペース』の中に入れていた、いつでも使えるようにと凍らせておいた樽に入ったタルタルソースをそっと女神像の前に置く事にした‥

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