第608話
スキル【模倣】を授けてもらった事は感謝してるんだけど‥
これまでいろんな事に巻き込まれたと思ってたけど、まさか俺が巻き込んでたとは‥
女神様の意図が見え隠れする気がしてはいたんだけど、神託やそれこそ御使などならわかるけど、まさか個人に対して接点を持ってくるとは思わなかった。
でもまだ何もしてないもんな‥
だとしたら女神様が俺に与えた役割ってのをまだ全う出来てないわけだな。
う〜ん‥
平和に暮らしたいんだけどなぁ。
あんまり過度な期待をされても‥
好きに暮らしたいと思ってるだけなんだけどね。
そんな希望もスキル【模倣】があるおかげだから、それを与えてくれた女神様のために動くのは多少は仕方ないのかもな。
まあ女神様が俺に何かしてほしいと思っている事がわかったとしても、何をすべきなのかってのがわからないから、俺のする事は変わらないけどね。
自分の手の届く範囲で出来る事をやって、みんなとの生活を守るだけだ。
まあ最近手の届く範囲がだんだんと広くなってきている気はするけど。
俺は女神像に頭を下げて、横を通り抜け先に進む。
すると崩れて半分以上が埋まっている地下に進む道を見つけた。
ここから召喚の魔道具が設置されている場所に行けるのだろう。
少し埃っぽい階段を降りていく。
すると壁が剥がれていたり、柱が倒れたりしているが少し開けた所に出た。
そこには部屋いっぱいに黒い台座のようなものが置かれている。
台座はちょうど真ん中辺りにドラゴンのブレスが当たったようで、台座は真っ二つに割れていた。
あれが召喚の魔道具のようだな。
俺は台座に近づいていく。
特に装飾もなく、ここに召喚の魔道具があると聞いていなければわからなかったかもしれない。
これは黒曜石か?
欠けて地面に落ちいている黒い石を手に取る。
魔力を込めると中に刻まれている魔力回路が反応して、淡く光る。
しかし魔道具が割れているため魔力は魔力回路の終着点まで行くと、そのまま空中に霧散して消えた。
俺は台座の方に近づき、台座に刻まれている魔力回路を確認する。
魔力回路は回路に全くの無駄がなく、本当に異世界から人を召喚する事だけを目的とした回路のようだ。
無駄な回路が一つもない。
それなのに台座の至る所に魔力回路がきざまれている。
それだけ異世界から人を召喚する事が複雑だという事なのだろう。
必要とされる魔力もとても1人で出せる量ではない。
1人でこの魔力を出そうとしたら、数十年‥いや数百年はかかると思う。
しかも魔力回路に込めた魔力はそのまま溜まっているわけではなく、少しずつ抜けていくだろう。
この魔道具を一度に動かそうとしたら、それこそ10,000人くらいの人から無理やり魔力を集めれば何とか動くのではないだろうか‥
正人たちを元の世界に戻すきっかけになるかもしれないので、隅から隅まで魔力回路の流れを確認する。
召喚の場所は決まっているようだ。
多少の誤差はあるが、その周辺のにいる人を連れてくるようだ。
おそらくこの場所が正人たちがいた日本という国になるのだろう‥
人数は関係なく、決められた場所にいる人たちをこちらに運ぶと言った感じだな。
それに召喚された人が力を得るために、身体をこちらの世界にくる時に再構築している。
魂に刻まれてあるはずのスキルを得るために必要な事だったんだろう。
なるほど‥
やはりこの魔道具は連れてくる事はできるが、送還する事は出来ないようだ。
聖王が言っていた、魔王を倒したら元の世界に返してやると言っていた事は出来そうにない。
やはり見てよかった。
すぐには無理だが、もしかしたら正人たちを元の世界に戻す事が可能かもしれない。
身体の再構築など、元の世界に戻すだけであれば省ける所もかなりある。
もしかしたら本当に時空魔法のレベルが上がればどうにかできるかもしれないな‥
しかし‥
これだけの魔力回路があれば、魔道具作り放題だな!
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