第606話
「お、俺の知っている方たちでドラゴンの魔道具を借り受けている人たちがいます。彼らに俺からも話をしておきますから。」
すまん、クワイス‥
今回も巻き込んでしまいそうです‥
大丈夫!
また魔道具用意しますから!
「本当ですか!それは助かります。御使様の魔道具は強力な物ばかりですからね。それを使われる人たちであれば一国の援軍をいただくより心強いです。」
クワイスたちに作った魔道具は手抜きじゃないから大丈夫とは思うけど‥
帰りにクワイスのところに寄らないといけないな‥
しかしトールルズにも異変があると聞いていたが、まさか帝国が絡んでいるとは‥
いや、帝国の背後にいる魔王が何か企んでいるんだろう。
帝国の兵をトールルズまで運ぶ方法はわからないけど、魔族なら何らかの魔道具があるのかもしれないな‥
この件も獣王様と話をしないと‥
「ありがとうございます。イコル君は神聖国の事を真剣に心配してくれているんですね。大丈夫ですよ。神はいつも見守ってくれていますから。」
うっ‥
見守らざるを得ない状況になってしまっているんですよ‥
「ところで、イコル君のもう一つのお願いとは何ですか?」
あ、帝国の動きが衝撃的ですっかり忘れてた。
「こんな時に言うのも何ですが‥できれば大神殿の中を見せていただく事は出来ますか?」
「聖地をですか?イコル君なら構いませんが‥」
聖地跡じゃないのか?
何故聖地扱いなのだろう‥?
「大神殿の跡地だから、聖地跡ですよね?」
「いえ、大神殿は既に穢れていましたから。その穢れを御使様が聖なる力で払っていただけました。だから今のあの状態こそが聖地になるんです。」
いや、意味がわからないよ!
聖なる力でも何でもないよ!
ただ乗り移ったドラゴンの属性ブレスですよ!
聖なる力とか微塵も入ってません!
「そ、それじゃあ解体したり建て直したりとかは‥?」
「まさか!聖地を荒らすわけがないじゃないですか。」
「そ、そうですよね‥」
そうなんだな‥
一見まともそうに見えるけど、この人も少しおかしい人だったんだな‥
そりゃそうか‥
そういえばタルタルに人生救われた過去を持つ、かなり特殊な人だった‥
「夕刻まで待っていただけると私も付いて行けますが、今からとなると‥」
「俺1人で入る事はできませんか?」
「イコル君なら構いませんが‥ただの好奇心というわけじゃなさそうですね。聞く事は出来ないと思いますが、少し気になってしまいますね。」
いえ、ただの好奇心です。
あ、間違えた。
正人たちのためです。
あとたくさんの魔道具を作るためです。
ちゃんとグルンデルさんにも魔道具渡せるように頑張りますから。
「できればすぐにでも中に入りたいと思っています。」
なるべく早めにクワイスや獣王様に話を持っていかないといけないからな。
というのもあるけど、好奇心からただ早く入りたい‥
「わかりました。すぐに文書を書きましょう。イコル君の身元は私が保証する事と、聖地に入る許可を私が出した事を証明するためのものを。」
「ありがとうございます。」
グルンデルさんは席に戻り机から紙を取り出して許可書を書き始める。
「イコル君できましたよ。これを聖地を警備している方にお見せすれば入れます。ですが中は崩れやすく不安定になってますから、くれぐれも気をつけてくださいね。」
「はい。ありがとうございます。それでは失礼します。」
「あ、イコル君。今度この国から出る時は一言言ってくださいね。できれば帰る前にもう一度会いたいので。」
「わかりました。なるべくそうします。」
「はは。わかりました。なるべくお願いしますね。」
俺はグルンデルさんに軽く頭を下げて部屋から出ていった。
「しかし不思議な少年ですね‥」
グルンデルは今しがた部屋から出て行った少年の事を思う。
「偶然、御使様の声を聞いた‥ですか‥」
そんな偶然あるのだろうか‥
「彼ほどタルタル神様に愛されている少年はいないでしょうね‥」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます