第601話
冒険者ギルドで情報をもらった後は、すぐに動かずに拠点で活動していた。
日々の生活も落ち着きつつあった。
パーティメンバーも勇者たちも、魔王戦に向けて訓練をしている。
俺も魔道具を作ったり、訓練に参加してアレカンドロと模擬戦したり、バラックスさんやリルとの模擬戦から逃げたりといった生活をしていた。
獣王様の模倣できるスキルの提供については、しばらく時間がかかりそうとの事で、気長に待つ事にした。
魔道具作りもひと段落したので、気になる事を片付ける事にした。
まずは神聖国に行って、現在の神聖国の状態と隣接する帝国の動きを調べたい。
そうなると現聖王と面識のある、『影法師』のイコルで行くべきだよな。
「アキーエ。ちょっと神聖国に出かけてくる。多分夜には帰ってくると思うけど、状況によっては一泊してくるかも。」
「はーい。何かこっちで用意しておくものとかあるの?」
「いや、今はいいかな。何か必要になったら連絡するよ。」
「わかったわ。」
よし、それじゃあ転移で神聖国へ行‥
「出張に行く前の旦那を見送る妻かっ!」
おおっ!
いきなりあやめに絡まれた。
「なんだよいきなり。」
「真っ昼間っからイチャつくんじゃないわよ、まったく!」
そんな事はないとは思うが‥
「それにちょっとそこまでの雰囲気で歩いて2週間はかかるような所に行くんじゃないわよ!まったく、これだからチート持ちは‥」
するとそばに居た卓が何かブツブツ言っている。
「マルコイさんのチートである転移は魔法での転移だ。だから全属性の魔法が使える僕であればマルコイさんほどではないとはいえ、使えるようになるはずだ‥」
そう言えば卓のスキルは模倣してなかった気がする。
神聖国から帰ってきたら、模倣させてもらおうかな。
まあ俺が見ただけで膝から崩れ落ちないようになってからの話かな‥
「とりあえず行ってくるよ。急な用事があるようならこれに魔力を込めてもらったらいいから。」
そう言って俺はアキーエに小さなボールのような物を渡す。
「言葉のやりとりはできなかったけど、魔力感知できる魔道具は作れたんだ。その魔道具に魔力を込めてくれたら、俺が持ってる魔道具が光るんだ。」
相互間で光るだけだけど、緊急時としてはあった方がいいだろう。
「それじゃあ行ってくるよ。」
俺は仲間たちに見送られて神聖国に転移した。
視界の端にミミウがソーセージを食べている姿が入った。
あれ?
もう商品化したの?
さすがのスピードだな。
ホット商会の商品化や業務拡大のスピードは目を見張るものがあるな‥
いや、スピード早すぎだろ‥
久しぶりに神聖国に来た。
久しぶりとは言え、そこまで時間は経っていないつもりだったんだけど‥
『影法師』を隠している廃教会に転移で移動して、『スペース』に人形を入れて外に出た。
しばらく歩くと、大通りに出る。
以前来た時は閑散とした通りだったのだが、今はかなりの人通りがある。
それはいいのだが‥
白を基調とした通りに、明らかに場違い感がある店が建ち並んでいる。
『タルタルサンド』、『飯処タルタル』、『雑貨屋タルタル』‥
その全てにホット商会の名前が入っている。
雑貨屋なんて、同じような店ができたら名前は何にするんだろう‥
タルタル二号店なんだろうか‥
いや、そんな事が問題なんじゃない。
なんちゅー速さで事業展開してるんだ?
出る時見たソーセージもそうだが、進むと決めた時のキリーエの動きの速さがちょっと怖い。
しかし‥
街を歩く人たちの表情が明るくなったような気がする。
白を基調とした厳正な雰囲気で日々生活をしていた人たちが、徐々にだが色のついた生活を送ろうとしている。
何かに怯えながら必死に作り笑顔をしていた人たちはもういないようだ。
いい顔で笑う人や、子供の声も聞こえる。
食事を会話しながら楽しそうにとっている人たちがいる。
こうやって見ていると、ホット商会のおかげなんだろうと思えてくる。
白い世界にホット商会って色が混ざっていい感じになっていくといいけどな。
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