第600話
応接室に入ると、イザベラがお茶を用意してくれた。
うむ。
お茶が美味い。
やっぱり生を実感した後の飲み物は身体に染み渡る。
「それじゃ、さっき話してた問題なんだけど‥」
そう言ってイザベラさんが俺たちの前に座る。
「帝国にある冒険者ギルドと連絡が取れなくなってるのよ。」
「帝国の冒険者ギルド?」
「そ。各国に設置されている冒険者ギルドは報告義務があるから、定期的に連絡をしているんだけど、帝国からの連絡がしばらく前からあっていないの。正確に言うと、帝国から出てくる情報自体がないって感じね。」
多分意図的に情報が止められてるんだろう‥
まあ間違いなく魔族と手を結んでいる帝国だからな。
知られたくない事がたくさんあるだろうからそんな事もしてくるだろ。
「一応獣王様に報告はしているけど、帝国は魔族と手を結んでいるからだと思うぞ。だから情報も規制してるんじゃないかな。」
「あら?その情報はマルコイちゃんからだったの。エッケンさんから話は聞いたけど、誰からの情報までは教えて来れなかったからわからなかったの。」
エッケンさんも気をつかってくれたのかな。
俺が情報源とわかったら、国のゴタゴタに巻き込まれると思ったんだろう。
でもイザベラさんなら構わないだろ。
中身はしっかりしてるからな、人としてはどうかと思うけど‥
「後はトールルズの周りも少し問題が起きてるみたい。」
トールルズ?
ドワーフの国が?
「魔王が復活してモンスターが活気付いている時に、国の周辺からモンスターがいなくなったらしいのよ。もしかしたら魔族が関連してるかもって調べてるところ。」
確かに今の状況でモンスターがいなくなるのはおかしい。
トールルズか‥
早めに行く必要があるかもしれないな。
「でもよかったのか?俺にそんな情報を渡して?」
「いいのよ。マルコイちゃん、冒険者ランクはAだけど、Sランクじゃ収まらないくらい強いもの。いや、強くなったと言うべきかしら。でもまた随分と強くなったわね‥もう私じゃ届きそうにないわ。アキーエちゃんもね。」
いや、そんな事はないです。
さっきの突進を喰らったら一発でやられる自信があります。
「だからマルコイちゃん達にはお願いする事が絶対に出てくる筈だから、情報も惜しみなく提供するわ。」
そうだな‥
ちょっと前だったらお断りしてするところだったけど‥
でも今は正人たちと魔王を倒すと決めているからな。
正直情報をもらえるのはありがたい。
「ありがとうございます。俺たちも知り得た事は伝えます。」
「あら?どうしたのかしら、珍しいわね。マルコイちゃんの事だから嫌がると思ったのに。映えある獣人国の闘技会に出る事も渋るくらい表舞台に立つのを嫌がってたのに、急にどうしたのかしら?」
うっ‥
昔の事を‥
「今は魔王関係にどっぷりと足を突っ込んでますからね。この状態から逃げるのは難しそうだし‥だったら優位に立てる様に動きますよ。それに言ってなかったですけど、勇者たちも一緒にいますから。今更目立ちたくないからって理由で逃げるわけにはいかないでしょ。」
まあそれでもメインで戦ってもらうのは正人たちなんですけど。
俺はあくまで後方支援ということで。
「あら?あらあらあら?マルコイちゃん勇者ちゃん達と一緒にいるの?私勇者ちゃん達とまだ会った事ないのよ。羨ましいわぁ、イケメンかしら?」
「イケメンかもしれないけど、イザベラさんの好みじゃないと思うぞ。まだ若いしな。それよりもイザベラさんには是非会ってもらいたい人がいるから大丈夫だ。エルフェノス王国の王都にある冒険者ギルドで受付係をしているナイスミドルマッチョだ。先方にもイザベラさんの事を伝えているから機会があったら紹介してやるよ。」
「えっ!?それ本当?急にどうしたのよマルコイちゃん!でもとっても嬉しいし、楽しみだわ。お礼にチューしてあげようかしら?それともハグがいい?それとも‥」
俺はまだ何か言っているイザベラさんを置いてアキーエと共に部屋を出た。
よかったなおっさん。
相手も楽しみにしてくれるそうだぞ。
俺も楽しみだ。
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