第596話
さてと‥
スキル【獣化】か‥
人族の俺が使っても効果があるのか心配なところだけど試してみるかな。
俺はスキル【獣化】を発現させる。
使うと同時にかなりの魔力を吸い取られるような感覚に陥る。
「ぐっ‥」
時間にしてほんの1秒もみたない時間だろう。
すぐにその感覚が収まり、他の魔力を使うスキルと同様に徐々に魔力が減る感覚に落ち着く。
最初の魔力の減りはいったいなんだったんだ?
これも人族の俺がスキル【獣化】を使った事による反動だろうか‥?
自分の手を見る。
毛が生えた様子はない。
失敗したのだろうか?
しかし劇的にとまではいかないが、身体能力があがったのがわかる。
それに視力などの五感も、今からまでよりも上がったような感覚がある。
人族が使うと、身体の変化はない単純な能力向上スキルになるのだろうか‥?
その時獣王様の視線に気づく。
俺ではなく、俺の頭の上を見ているようだ‥
「マルコイ‥」
「あ、すみません。すこし感覚に戸惑っていました。人族が使うと身体的変化はないようですね。しかし身体能力が若干ではありますが、上がったように感じます。」
「いや、マルコイ‥身体の変化は起こっているぞ。頭を触ってみよ。」
頭‥?
俺は獣王様に言われるまま、自分の頭を触ってみる。
すると‥
今までなかった感触がある。
これは‥
耳か!?
な、なんだと?
スキル【獣化】の影響だとはわかるのだが、なぜ人族の俺に耳が出るのだ?
あっ!
そういえばお尻の辺りがモゾモゾする。
もしかしてこれは尻尾なのだろうか‥
な、なるほど‥
スキル【獣化】は獣人族の固有スキルのようなものだ。
だからそれを使うために、スキルが俺の身体に変化を与えたって事だろうか‥
いくら希少な固有スキルとはいえ、そんな無茶苦茶な。
でもとりあえず人族の俺でも使えるってことだから、しばらく俺が持っていてもいいかもな。
僅かではあるが、強くなれる手段にはなるからな。
うむ。
しかしこの耳は動くのだろうか‥
頭の上の方に耳がある事を意識して力を入れてみる。
あっ、今ピクピク動いた気がする。
「ぶふぉ!」
獣王様が吹いた。
「や、やめいマルコイ!耳をピクピクするでない!ぶはっ!」
失礼な王様だな。
初めての感覚なんだから試すにきまってるだろ。
しかし獣人化するスキルか‥
アキーエに譲渡してアキーエの猫耳を見るのも有り寄りの有りな気がする‥
「しかしよかったのう、スキルが使えるようで安心したぞ。身体的変化は‥ぶふぉっ!あ、あまり変わらないようで安心したぞ。」
そんなに面白いのか‥?
今度アキーエにも見せてみよう。
「はい。確かに身体能力の向上と若干ではありますが五感も鋭くなったと思います。ありがとうございました。」
「ふむ。お主に報酬を渡せてよかったぞ。お主のスキルを聞くまでは何を渡してよいかわからぬかったからの。爵位には興味なく、金は自身の商会で稼いでいるからのう。」
いえ、お金は持ってないです。
単純にお金をもらっても飛び跳ねるほど喜ぶと思われます。
「それと‥話は変わるがお主料理も得意だそうだな。」
「‥‥?得意といいますか、多少作る程度ですよ。」
「そうか?先日武具の取引で王城に来たキリーエに聞いたのだが、ホット商会で出している商品のほとんどはお主が作ったそうではないか?」
「ま、まあ確かに自分が作ったやつをもとに作っているみたいですが‥」
「そうか!それならばお主の腕を見込んで、頼みたい事があるのだ。」
ぬぬ‥
キリーエさん‥
何をしてくれますのやら‥
「は、はい。自分でよければ‥」
「そうか!助かるぞ。実はな、先日商人からの献上品として羊を大量にもらったのだが、数匹分は肉用で処理してあってな。城の者にも出しておるのだが、毎日同じ料理で飽きておるのだ。何かいい案はあるか?」
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