第595話

スキル【獣化】か‥


「何故かわからぬが、徐々に【獣化】を持つ獣人族がいなくなってきており、今では希少スキルになっている。おそらくワシらの生活が安定して、獣と生活が別れてしまったのが原因だろうとは思われるがな。しかしスキル自体は身体能力の向上や五感の鋭敏化など、通常ではありえない力を得る事ができる。」


なるほど。

それほどのスキルであれば是非とも模倣したいところだが‥


「まあ問題はお主が人族だから、人族がスキル【獣化】使った時にどうなるかわならないところだな。」


そうなんだよな。

あくまで獣人族のスキルだから、人族の俺が使ったらどうなるのか‥


多分使えないってのが可能性としては1番大きい気がするけど。


「構いません。使えなかったとしても問題はないので、模倣させてもらえませんか。」


もし俺が使えなかったとしても、アレカンドロに譲渡すればアレカンドロが使えるからな。


「わかった。しばし待て。」


エッケンさんが外に出て、1人の女性を連れてきた。

円背でかなりの高齢のようだ。


頭には狐耳がついているところを見ると、狐族の獣人のようだ。


「獣人国に数人スキル【獣化】を持つ者がいるが、今王城にいるのは彼女だけだ。」


「オドレイと申します。」


「マルコイと言います。すみませんがよろしくお願いします。」


俺がそう伝えると、オドレイはギルドカードを提示してくれた。


オドレイ

冒険者ランクA

スキル【獣化Lv.6】


「私はスキル【獣化】を使って冒険者をしていました。今は高齢で戦う事はできませんけどね。でもスキルをお見せすることくらいはできますよ。」


オドレイはそう言うと、俺から少し離れる。


「いきます。【獣化】」


オドレイがスキルを使う。


すると円背だったオドレイの背中がすっと伸びる。


そして年齢により刻まれていた皺のある顔に、毛が生えてくる。


顔だけではなく、身体全体に毛が生えてきた。

そして【獣化】が終わる。


なるほど。


スキル【獣化】によって、オドレイはより獣に近い姿になった。


獣人と獣の間といったところか。


「どうでしょう。これがスキル【獣化】になります。」


そう言って、オドレイはその場から部屋の隅に移動した。


とても先程まで目の前にいた高齢の女性の動きではない。


「如何でしょうか?スキルを見たいとの事でしたが、参考になられましたでしょうか?」


「ありがとうございます。参考までに、その状態はどれくらいの時間保てるのでしょうか?」


「そうですね、魔力が尽きるまで、といったところでしょうか。時間として5分くらいですかね。ですが今の私は魔力が尽きるまで動いてしまうと、その後2〜3日は動けなくなるでしょうね。若い時であれば半日くらいでしたが‥」


なるほど。

さすがにこれ程のスキルだ。

デメリットはあるだろう。

魔力の消費量が多く、使った後の疲労感か。

しかし魔力を回復しながら使うのであれば、かなり長い時間使用する事ができるだろう。


まあ俺が使えるのであれば、と言ったところだがな。


(ピコーンッ)


『模倣スキルを発現しました。スキル【獣化】を模倣しました。』


ふむ。

とりあえずスキルは模倣できたようだな。


使えるかどうかはまだ不明だけど‥


「大変珍しいスキルを見せていただいて、ありがとうございました。自分のスキルの参考になりました。」


俺は獣王様に目で合図する。


獣王様は大きく頷く。


「オドレイ。マルコイはワシが目をかけている冒険者でな。スキルの事で少し悩んでおったから助かったぞ。」


「勿体ないお言葉ありがとうございます。それでは失礼致します。」


オドレイは【獣化】を解く。

そしてそのまま壁にもたれかかるように体勢を崩す。


エッケンさんが人を呼び、支えながら部屋を出て行った。


「どうだマルコイ。スキル【獣化】は模倣できたか?」


「はい。ありがとうございます。使えるかどうかは今から試してみます。」

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