第593話

獣人国での日々が戻ってきた。


と言ってもやる事はセイルズにいた時とあまり変わり映えはしないけど。


今日も今日とて新作魔道具作りをしている。

これはあくまでも息抜きで、毎日やっている訳ではない。


何故息抜きかと言うと、闘技会が終わった後に王様に献上する剣を作ると言っておきながらすっかり忘れていて、今は剣作りをやっているからだ。


獣王様に呼び出されて、「マルコイよ。そろそろ剣を作ってくれないだろうか‥?」って言われた時はかなり焦った。


忘れていたとは言えず、何本か試したんですが獣人国の炉じゃないと作れないみたいですとか言って誤魔化した。


まあ獣王様が苦笑いしていたから、誤魔化せてなかったみたいだけど‥



俺のミスリル入りのダマスカス剣はスキル【剣匠】のレベルが上がってからは、かなり楽に作れるようになってきた。


もうじき獣王様に献上する分はできそうだ。


ただそれが終わったら、自分用にオリハルコンとミスリルを使ったダマスカス剣を作るつもりだから、しばらく剣作りをする事になりそうだ。


失敗するかも知れないけど、かなりの量をミミウのお友達であるノームさんにもらってるので多少の失敗は大丈夫である。

持つべきものは小さな友だな。


お返しに動けなくなるまで魔力取られたけど‥


俺が『スペース』からオリハルコンの小さな塊を取り出した時のサミュウさんの、何なのお前?的な顔が今も忘れられないけど‥


今使っているミスリルのダマスカス剣でも充分なのだが、来るべき魔王との戦いのために少しでも戦力アップを図りたい。


オリハルコンのダマスカス剣ができたら、ミスリルのダマスカス剣については正人に渡すつもりだ。


正人は光属性を持つもの以外が使ったらアフロになってしまうという、あまり意味のない武器を使っているからな。

そんな意味不明な武器ではなく、もっといい武器で魔王戦は戦ってもらわねばならない。


いずれは勇者たちの武器を作っていこうと思う。

まあ俺のパーティの装備を作ってからだけど‥


「ふぅ、出来た。」


俺は自分の手元にある、完成した魔道具に視線を落とす。


「今回は何を作ったの?」


俺が魔道具を作成すると言ったら、アキーエが見たいと言ってついてきた。


なかなかの時間がかかったが、その間俺の邪魔をしないようにずっと静かに見ていた。


アキーエは邪魔しないようにしてたんだろうけど、なぜか余計に緊張してしまった‥


「今回はライリーに渡した魔道具の改良版みたいなものだよ。」


「へぇ、何に使うの?誰かに頼まれたの?」


「いや、自分で使おうと思って。」


「ふぅん。マルコイは軽鎧を装備すると思ってたけど、魔道具にするんだ?」


「普段は軽鎧は装備するよ。これは目立ちそうな時に使おうかと‥」


「え?」


「いや、これからも色々動く事になるだろうし、あんまり目立つのもなぁって思ってさ。ノギスを見て、羨まし‥大変そうだなって。」


「そうね‥あんなの見たら、わたしも困るかな。」


そうか。

やっぱりアキーエだとヤキモチ焼いてくれるんだな。


あれ?

アキーエの拳から炎が上がってるんだけど‥?


あれ?

これって俺がノギスと同じ環境になったら大事になりそうな気がするんですけど‥?


「そ、そうなんだ。だから目立ちそうな時は、この魔道具を使用して正体を隠そうかと思ってさ。神聖国で使った変装用の魔道具でもよかったんだけど、戦闘になりそうな時なんかは、これを使った方がいいと思って。」


俺は腕輪型の魔道具に声をかける。


「『装着』」


すると腕輪の魔道具から黒い布が這い出す。


そして服上から黒い布は俺の全身を包む。


服の上に這った布は全身を包み、服ごと俺の身体に密着する。


うん、服ごと包み込んでみたけど、動きにくい事はないな。


身体に密着するので、下に来ている服も目立たなくなっている。


顔まで包まれた姿は絶対に俺とはわからないだろう。


「マ、マルコイ。ごめん‥なんだか変態みたいなんだけど‥」


うん。

そうだろうな、今の俺の姿は黒の全身タイツ姿になっているからな‥


装飾は必要そうだ‥

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る