第572話

「もう1つ?確証に至る理由がもう1つあるってのか?」


あるね。

思いっきりあるんだけど、それを言うと流石におっさんも困ると思うから、これは獣王様に言わないとな。

獣王様なら多少困っても大丈夫だろ。

だって王様だし。


「俺は勇者の件もあったから、神聖国側についてた感じだったんだよね。だから帝国が神聖国を攻めるまでの時間を少しでも稼ごうと思って、帝国兵にちょっかい出してたんだけどさ。そこで思ってもなかった奴に反撃されたんだよ。」


「思ってもなかったやつ?」


「ああ魔族だよ。」


「なっ!そりゃ本当か?」


「嘘ついてどうする。嘘はおっさんがギルドの受付してるってだけで充分だ。」


「いや、だからおじさんは毎日受付してるよ。毎日とても素敵な笑顔を振り撒いてるよ!」


「うっ‥おっさんの笑顔を朝から見る冒険者たちが不憫でならないな‥」


「辛辣っ!」



「俺が直接戦ったから間違いないよ。赤眼も見たし何よりその強さが魔族だと物語っていたよ。」


だって多分今でもまともに戦ったら負けそうだもん。


そりゃ多少卑怯な手を使えば勝てると思うよ。

手から光属性の魔法を放ちながら近寄るとか‥


いや、逆に真っ二つに斬られそうな予感しかしない‥


「そんなもん大事じゃないか!」


「ああそうだな。だからおっさんに言って、サベントさんに伝えてもらおうと思ってさ。」


「なんでだよ、お前が直接言えばいいじゃないか?」


「いや、なんとなくサベントが苦手でさ。色々と見透かされそうで、あまり近寄りたくないんです。」


「はっ!なんだお前にも苦手な人がいるんだな!こりゃ面白い!」


「まあ苦手な人くらいいるぞ。それよりもおっさんに紹介してやりたい人がいるんだが‥」


「なんだ急に?べ、べつに俺は恋人なんて、ほ、ほしくないから、そんな気使わなくていいぞ。」


「いや、気にするな。獣人国の首都でギルマスしている人なんだけど、その人も仕事が忙しくて出会いがないみたいでな。俺たちは首都に向かうつもりだから、その時おっさんの事をいい男だって紹介しといてやるよ。」


「な、な、なんだお前。そんな悪いな。」


「おっさんは獣人に偏見はないだろ?」


「当たり前だ。獣人差別は人として間違ってるからな!」


うん。

男らしい。

多分イザベラさんも好きだと思うぞ。


「わかった。その人は兎人族の人でイザベラって言うんだよ。向こうに着いたら、おっさん宛に手紙でも描くように言っておくからな。」


「ありがとうなマルコイ。お前は意外といい奴だったんだな。」


ははは。

意外とか俺はいつもいい奴だ。


おっさんよ、楽しみにしているがいい‥





時間も経ち、お酒もかなり飲んだ気がする。


そろそろ帰ろうかと思ったが、気になる事を1つ聞くのを忘れていた。


「おっさん、ところでガッツォさんはどうしてるんだ?」


ガッツォさん‥

スキル【勇者】は持っていないけど、おそらく正人たちが異世界から呼ばれなかったら、多分彼がスキルを発現していたと思う。


年齢と見た目的にもナシ寄りのナシかもしれないが、俺はそう信じている。


「ああ、ガッツォか。あいつは今、ロンギル共和国に行ってるぞ。」


「え?ガッツォさんは王都で活動するものと思ってたんだけど、拠点を変えたのか?」


俺たちはロンギルから来たのに会えなかったな。

残念だ。


「いや、王都が拠点なのは変わらないけど、なんでもパーティメンバーの言葉じゃ、「タルタルが俺を呼んでいる。これはおそらく神託だ。」みたいな事を言ってロンギルに行ったらしいぞ。」


え?

俺神託なんて出した覚えないよ!


いやいや、俺は勝手にタルタル神って言われてるだけで、神託なんてそもそも出せないんだけど‥


どうなってるの?

ガッツォさんって本当に勇者だったりする?


でもタルタルの勇者って‥

それだけはないでしょ‥

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