第570話

「えっとおっさん‥勇者の動向知ってるって言ったらどうなるかな?」


「ああっ?お前また何か関係してるのか?」


「いや、関係しているというな何というか‥」


「言わなくていい。聞いちまうと立場上まずそうな気がするから。」


「そっか。」


そうだよな。

おっさんは冒険者ギルドの職員だから、ギルマスへの報告義務とかあったりして、俺と一緒に面倒ごとに巻き込まれそうな気がするのかね。


「でもまあ勇者の動向を知ってたくらいじゃ別にどうにかなるわけでもないけどな。前聖王だったら、知ってるやつを攫ったりするかもしれなかったけど、今の聖王なら聞くのに人を派遣するくらいじゃないか?まあどちらにしろ、俺は聞いたらギルマスに報告する形にはなるけどな。もちろん何処にいるか知ってるくらいだよな?」


「ああ。そうだな。神聖国でゴタゴタがあってる間に勇者を攫って連れてきた。それで今一緒に行動してるんだよ。」


俺は捲し立てるように一気に口にした。


「ちょっ、お前何言ってくれてんの!?」


「ん?おっさんだけ関係ない感じで見てるのがすっごく嫌だったから、巻き込もうと思って。」


「うわぁ、そんな満面の笑みで言う言葉じゃないと思いますけど‥?」


人の苦労は分かち合おうじゃないか。


「まあとりあえずその件についてはギルマスに報告しておく。本人たちは魔王討伐についてどう考えてるんだ?」


「それは心配しなくていいぞ。魔王と戦うつもりだし、俺も手伝うからな。」


「そうか!マルコイが手伝うなら安心‥‥安心かな?」


全くなんて失礼なやつなんだ!


俺がついてるんだから、何よりも心強いに決まってるじゃないか!


「何かあったら俺も力になるから、そん時は言ってくれ。」


「わかった。ありがとうなおっさん。伊達にギルドの華役である受付嬢を、他の女性からぶんどってるわけじゃないな。」


「いや、おじさんギルドの人員配置で受付係してるだけだからね!意地悪して他の人から受付係を奪ってるわけじゃないからね!」


「ふむ。そう言う事にしておいてやる。」


「いや、最初からそうなってるよ!」


1人で騒がしいおっさんだな。


俺はお酒をおかわりする。


今度はホット商会が作っている、ウィスキーをもらう。


香味がよく、かなり酒気は強いが柔らかい味わいだ。


「ところで他の国はどんな感じなんだ?魔王が復活したのは今じゃ周知の事実になってるんだろ?何か動きがあったりしないのか?」


「そうだな。まだ魔王軍の本格的な進軍があってるわけじゃないからな。今は各国軍備に力を入れているところじゃないか?冒険者でも高ランク冒険者にはかなり声がかかってるみたいだぞ。」


「そうなのか?俺は声かかってないけど‥?」


「お前は獣人国の闘技会で高ランクになったからな。ギルドの依頼で大きな仕事をしてないから、何処も様子見してるんじゃないのか?」


「そんなもんなのかね?」


「ああ。呼んでみたけど、1対1に特化したやつだったり、モンスター相手には使えないスキル持ちだったりすると意味がないからな。」


なるほどね。

そうなるとギルド依頼じゃなくて勝手に動いてたのは良かった事になるのかね。


「そうだな‥後は帝国だけが少しおかしな動きをしているようだけど、どこまで本当かわかってないって感じかな。」


「帝国?」


「ああ。帝国と神聖国にいざこざがあったのは知ってるよな。詳しくは聞きたくないけど、お前はかなり関わってると思うから、もちろん知ってると思うけど。」


うん。

知ってます。


「その帝国だが、新しい聖王から謝罪があったらしく、お互い魔王を倒すために協力しようなんて話になったんだよ。」


「そりゃいい事じゃないか。」


「そうなんだよな‥でも帝国の軍備がな、どうもモンスター相手の軍備じゃないみたいでな。帝国が買い漁ってるのが、攻城戦用の武器だったりあきらかに攻めるための準備をしてるみたいなんだよ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る