第568話
「わかりました。ここでの話は私とバートンでとどめておきます。でもそれもそんなに必要なさそうですけどね。」
「ん？何故だ？」
「マルコイさんはこれからも活躍されそうですし‥そのうち周知の事実になりそうですから。」
そうだなぁ‥
獣人国に行っても魔道具作りとか多分我慢できないもん。
「マルコイさんはこれから王都で生活されるんですか？もしそうなら王様と相談して家を用意してもらいますよ？」
「いや、お構いなく。家は獣人国にあるからな。王都には数日滞在した後に獣人国に戻るつもりだ。」
「それは残念ですね‥出来ればマルコイさんには王都で活動してもらいたかったのですが‥」
「すまないな。獣王さんと約束してるんだよ。本当はすぐに帰るつもりだったんだが、いろいろあって遅くなってしまったんでな。」
そろそろ帰らないと獣王様も怒ってそうな気がする‥
「わかりました。また王都に来られた際は必ず冒険者ギルドに寄ってくれると嬉しいですね。」
「そうだな。王都に来たら、おっさんを揶揄わないわけにはいかないから、ギルドには必ず寄ると思うぞ。」
「なんでおじさんを揶揄うためにわざわざ来るの！？」
え？
え〜と‥
俺が王都にいる時の日常だからかなぁ‥
「とても失礼な事を考えているのが伝わってくる！」
「そんな事はない。おっさんを揶揄うのはもう俺の日常の一部みたいなもんだ。おっさんを揶揄わないと、俺がソワソワしてしまうだろうが！」
「何それ！予想の倍は酷かった！それに何そんな当たり前の事を聞くなみたいな顔ができるの？そっちの方がおじさん怖いよっ！？」
相変わらずうるさいおっさんだ。
「ふふふ。相変わらず楽しそうでよかったです。これなら心配しなくても、マルコイさんは王都に来たらギルドに寄ってくれそうですね。」
まあそうだな。
王都には来たら、まずおっさんに会いに来るだろうしな。
「そんなに心配しなくても、何か困った事があったら手を貸すくらいの事はするさ。」
「それは頼もしいですね。何かあった時は、遠慮なく頼らせてもらいますよ。」
「ああ。依頼料はおっさんからふんだくるから大丈夫だ。」
「なんでおじさんなの！？」
「ん？なんとなくだ。」
「何それゲフン！」
おお！
さすがおっさんだ。
ゲフンなんて言って倒れるやつ初めてみたぞ？
「それじゃおっさんあとでな。サベントさんもこれで貸し借りなしでいいんですよね？」
「ええ。大丈夫ですよ。」
よかった。
何かムズムズしてたしな。
多分獣人国に戻ったら獣王様に聞かれると思うし、好きな事をやっていきたいと思ってるのに、隠し事をしたままだとどうも動きづらいしな。
これで気になってた用事も済んだし、宿に戻るとするか！
マルコイが去った後の扉を見つめるサベント。
王都から旅立った時と同じ人とは思えなかった。
雰囲気もそうだが、何か神々しい感じがした。
多分エルフしかわからないとは思うが、名を持たない精霊が彼を讃えていたのだ。
それは彼が沢山の人から感謝や祈りを受けている証だ。
あの時、何としても引き留めるべきだったのかもしれない。
しかしあの時無理に引き留めたとしたら、今のような良好な関係が結べたのかはわからないけど‥
でもバーントがいてくれて本当に助かった。
バーントは彼と気が合うようで、よくお酒を飲みに行ったりしているみたいだから。
バーントに彼が王都に住むように仕向けさせるべきか‥？
いや、やめておこう。
彼は善意で何かあったら助けてくれると言っているのだ。
その関係を崩すべきではない。
彼はおそらくこれからもっと多くの人から感謝や祈りを受けるだろう。
それこそ一国の王なんて目じゃない程の人になると思う。
敵対する可能性のある行為など、とてもじゃないけどすべきじゃない。
今は彼が今から何をするのか‥
その軌跡を見る事にしよう。
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