第567話
バーントは絡んできたパーティと別れ、俺をギルドマスターの部屋まで連れてきた。
扉をノックすると、部屋から返事が返ってくる。
「どうぞ。」
落ち着いた女性の声が聞こえた。
「失礼します。」
俺はバーントと一緒に部屋の中に入る。
「ギルマス。マルコイがギルマスと話したいことがあると。」
「あら?マルコイさんお久しぶりですね。この間王都に来られた時は、私を待たずに違うところに行かれたみたいでしたし‥」
うっ‥
あれは俺は悪くないぞ。
どこかに行ってたサベントさんが悪いと思うぞ。
「ね。」
あ、はい。
俺が悪いです‥
「それで、今日はわざわざどうされたんですか?」
「そうだな。サベントさんには借りがあったからな。その借りを返すために来た。」
「あらあら。覚えてたんですね?てっきり忘れられてるものと思ってましたけど。」
「約束したし、あの時は本当に助かったからさ。」
「それはよかった。バーントは退席させますか?」
「いや、別に構わないよ。おっさんにも世話になったからな。それにもう隠すのも難しくなってきたし。」
「マ、マルコイが世話になったなんて言うとは‥明日何が降る?槍か?鎧か?チキン南蛮か?」
失礼なやつだな。
あと最後のチキン南蛮は気になるので、あとでお話ししようじゃないか。
「それじゃあ俺のスキルについて教える約束についてだが‥」
今まで隠してきたけど、もう大丈夫だろ。
「俺のスキルは【模倣】。他者のスキルを模倣するスキルだ。」
「他人のスキルを模倣するスキル?」
「ああ。模倣するまでに、いろいろと条件はあるが、それをクリアすれば他人のスキルを自分の物として使う事ができる。」
「なっ!なんだそのとんでもないスキルは!?」
さすがいいリアクションだな、バーントのおっさん。
「まあスキルを模倣すると言っても模倣したスキルは進化前のスキルになるし、レベルも1から上がることはないけどな。」
「でもそれにしたってお前‥今まで聞いた事もないスキルだぞ。」
「ふ〜ん‥」
サベントさんは俺の発言の後に少し考えているようだった。
「しかしマルコイさん。マルコイさんのその強さは‥とても他人のスキルをコピーしただけでは到達できない程の高みにあると思いますが‥?あなたの獣人国や、ロンギル共和国での事も聞いていますが、情報通りの強さになるには、もう少し何か足りない気がします。」
さすが王都のギルドマスター。
しかしロンギルからの情報は間違いなくスキャンだろうな。
あのやろう。
搭乗型ゴーレムの座るところに生卵置いててやるからな。
「そうだな。確かに俺のスキルにはまだ続きがある。その模倣したスキルを合わせて別のスキルを作る事が出来るんだ。」
「なっ!そ、それは驚きましたね‥まさかそんなスキルがあるなんて思いませんでした‥でも‥そこまであっさり話すと言う事は‥まだ何か隠してそうな気がしますけど?」
「そうだな。でもここまでだ。借りを返す以上にサービスしたつもりだ。これ以上はご想像にお任せするよ。」
「残念です‥でも何故急に話す気になったんですか?」
「そうだな‥今までは俺のスキルの事で問題があった時は、仲間に被害が出そうだったんでな。でも今は仲間を守れる強さを手に入れたつもりだ。それと仲間も俺を助けてくれる程強くなった。もし俺のスキルの事で何かあったとしても全て倍で返せる程にはなったと思うからな。」
「なるほど‥」
「それにロンギル共和国じゃあ、かなりスキル使ってあれこれやったからな。向こうじゃ俺がスキル使うのは今じゃ暗黙の了解みたいなもんだ。だから遅かれ早かれバレるだろうとは思ってるけどな。」
「そうなんですね‥でも最初に教えてもらって嬉しかったですよ。」
まあ正確には最初じゃないんだけどね。
「まあそう言う事だ。だからと言って国とかに報告しないでくれよ。この国は割と好きだしな。」
出来ればこの国と喧嘩したくない。
まあもし何かあっても獣人国に逃げ込むけどね。
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