第566話

槍士が槍を突いてくる。


もちろん半身で躱し、口金の部分を下から剣で跳ね上げる。


すると槍から穂が外れて明後日の方に飛んでいく。


男は唖然とするが、そのまま穂のない槍をこちらに突いてきた。


その意気や良し。


突いてきた槍を避けて槍の柄を脇に抱える。


そしてそのまま槍を振り回す。


男はたまらず槍を離すが体勢を崩したので、取り上げた槍を男の額めがけて投げつける。


まともに額に槍を喰らった男は目を回してその場に倒れた。


さて後1人。


男が持つ剣は、いくら見つめてもやはりぼやける箇所が見当たらない。


でもここまで来たら、全部壊させてもらうぞ!


俄然気合が入る。


男は警戒していたが、思い切って突っ込んできた。


何故に無策で突っ込んでくるかね?


男は上段から思いっきり剣を振り下ろしてきた。


もちろん当たらないけど‥


俺は横に数歩動き男の剣を躱す。


「どっせい!」


そしてその場で前方宙返りして自分の剣を相手の剣の腹に叩きつけた。


折れろーっ!


男の剣は打ち付けた衝撃で、持っていた男の手から離れて後方に飛んでいった。


俺は歩いて剣の方に近づく。


よし!

ヒビは入ったぞ。


俺は男の方に振り返る。


俺は笑顔で男に問いかける。


「どうする?出来ればあんたは他の人たちを運んでもらいたいから気絶させたくないんだけど‥まだする?」


「い、い、いや‥へっ、へへへ‥」


男は愛想笑いを浮かべて首を横に振る。


よかった。


ここに放っておくわけにもいかないだろうし、気絶した人が起きるまでついててもらえばいいかな。


「おっさん、こんなもんでどうだ?」


「あ、ああ。マルコイお前‥お前また随分と強くなったな。」


「ああ?まだスキル使ってないぞ。あ、いや使ったと言ったら使ったか。」


「まだ全然本気出してないんだよな‥?」


「当たり前だ。だってこの人たち多分キリーエよりも弱いからな。」


「え?キリーエよりも?あいつは商人だし、商人のスキルしか持ってなかったはずだぞ。」


あ、やべ。


「まあ旅をしてる内に強くなったんだよ。多分4対1でも勝てると思うぞ。」


「そ、そうか‥そんなもんか‥ってそんなわけないだろ!俺の友人の子供になにしてくれてるの!」


「いや、ちょっとした魔改造を。」


「だめ!魔改造が何かわからないけど、響きからやっちゃだめなやつっ!」


相変わらずうるさいやつだなぁ‥


「まあそれは置いといて。ギルドマスターのサベントさんはいるか?」


「勝手に置いとかないでっ!」


そしてしつこい‥


「全く‥ギルマスなら今日は部屋にいるはずだぞ。特に出かける予定もなかったはずだからな。」


「そうか。なら少しでいいから会うことできるか?」


「そりゃ別に構わないが‥少し待っててくれ。」


そう言ってバーントは俺が武器を壊しまくった奴らの元に行く。


武器も安いもんじゃないからな‥

少しやりすぎたかな?


「おい、お前ら。」


「なっ、なんだテメー!まだ‥何か用がありますか‥」


パーティのリーダーと思われる男がバーントさんに話しかけられて荒い言葉で追い返そうとしたが、俺が見ているのに気づいて語気を弱める。


「あれがAランク冒険者だ。あいつはちょっと特別だが、普通のAランクでもお前達が戦ったら確実に負けるし、下手に絡んだら怪我じゃすまん。少しはわかったか?」


「ちっ!わかった‥わかりました。」


「それじゃあちゃんと身の丈にあった依頼を受けて、強くなるための努力をするんだぞ。」


「わかっ‥わかりましたよ。」


リーダーと思われる男は他のパーティメンバーに声をかけて気絶したやつを起こしている。


「ところで‥あの人は特別って言ってたけど、どういう意味ですか?」


リーダーと思われる男がバーントに声をかける。


「マルコイか‥?う〜む‥あいつは俺もよくわからん。多分人族?だとは思うぞ。」


失礼だなバーント!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る