第561話

セイルズに戻って2日かけて『影法師』を作った。


作成中は特に問題なく時間が取れたので、サクッと5体作ることができた。


正人が何故か悲しそうな顔で戻ってきたけど、理由は聞いていない。


世の中そんなに甘くないのだよ。


完成した『影法師』をペイセルさんに届けた。


何故か俺と『影法師』を何度か見比べていたが、大変ありがたいと受け取ってくれた。


「タルタル神様自ら作っていただいたご神像です。それだけで私達信者には何物にも変えれない程の価値があります!」


暗に似てないって言ってるよね?

俺が自分を美化して作ったわけじゃないからね。


飾ってあった絵を元に作ったんだから、タルタル教の絵師さんに文句を言ってもらいたい。


まあ俺そっくりの絵だったら『影法師』も作らずに逃げ出したかもしれないけど。


「それでは今後は神祭なども行なっていきますので、その時でもいいのでこちらを動かしてもらうと全ての信者にタルタル神様の神威が伝わると思いますので。」


「わ、わかった。でも俺も勇者の手伝い何かで忙しいからあまり期待しないでもらえると助かるかな。」


「承知いたしました。信者一同お待ちしております。」


おそらく一生あの『影法師』にスキル【アバター】を使う事はないと思う。


でも喜んでもらったから良しとしよう。




俺の用事が終わったので、獣人国に向かう事にした。


もちろん獣人国に向かうのは9人だ。


見送りにはスキャンやクワイスたちが来てくれた。


「マルコイさんは魔道具作ったらこっちに来ると思うからすぐ会えると思うんだけど、他の人達とは長く離れるかもしれないからな。」


スキャンはそう言いながらアレカンドロを見る。


「ははは。何を言ってるんだクワイス?魔王と戦う時は、俺が作る最新の魔道具を身に纏って魔族と戦ってもらわないといけないから、すぐに会えるぞ。」


「え?何それ?聞いてないけど‥?」


「ん?言ってないよ。でも手伝ってくれるだろ?」


「‥‥‥は、ははは。そ、そうだな、俺達は傭兵だ。マルコイさんの依頼なら年中無休で受けるつもりだからな。準備ができたら教えてくれ。あと魔道具はほどほどにしといてくれよ。」


「わかった、期待しててもらっていいぞ。」


「いや、期待してないよ!」


「馬鹿だな。魔族はモンスターよりも強敵なんだ。もっとより良い魔道具を用意するに決まってるだろ。」


「‥‥‥マルコイさんに求めるのは無駄だとわかっているけど‥常識の範囲内だと助かります‥」


「任せとけっ!」


「マルコイさんの常識じゃないからねっ!世間一般の常識だかねっ!」


失礼な。

俺の常識も一般的だっていうのに。


「マルコイー!またねー!」


ん?

遠くから声がする。


声がした方を見るとライリーが少し離れたところで手を振っている。


「ラ、ライリーちゃん‥」


正人がライリーの方を見ると、ライリーは近くの塀の影に隠れて顔だけ少し見せてこちらを見ている。


ま、正人。

お前いったいライリーに何をしたんだ‥?


「ま、正人。お前ライリーと何かあったのか?お前の事、ものすっごく避けてないか?」


「べ、別に何もしてないって!ライリーちゃんの体型がどんなに素晴らしいか、幼さの残る顔がどれだけ美しいか語っただけなんだ。」


いや、気持ち悪いだろそれ‥


「もちろん触ってないぞ!」


ノータッチってやつか。


「ライリーちゃん‥」


「だ、大丈夫だ正人。お前が魔王との戦いで活躍したら、俺がちゃんとライリーに伝えてやるからな。」


「本当かマルコイさん!おお‥神はいたんだ‥」


やかましい、神はやめなさい。


「ライリーちゃん!またなぁー!」


ライリーは塀の後ろに完全に隠れてしまった‥


こいつ本当は何かやらかしたんじゃないのか‥?


ちょっと正人たちを連れて行く事に不安を感じてしまうぞ‥

 


「それじゃあ行ってくる。またな。」


俺たちは獣人国を目指して旅立った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る