第560話
「マルコイさん!」
「はい正人君。」
「あと1人増えたとしても大丈夫っぽいよね?」
「それは問題ないけど‥誰を連れて行くんだ?」
「いや、もしライリーちゃんが俺について来たいって言ってきた事を考えてさ、先に聞いとかなきゃって思った感じ。」
「なるほどな。別に構わないけど。」
「それじゃあここを出る時は10人になってるっしょ!」
正人はそう言って部屋から出て行った。
ライリーのところに向かうのだろう‥
はっきり言って望みはないと思うけど‥
人を想うのは自由だしな。
例え料理対決で応援していた正人を若干引き気味でライリーが見てたとしても‥
俺はその日のうちにペイセルさんに渡す『影法師』を作りだした。
まずはアースンに行って、タルタル神様の絵を借りてこないといけないので、アースンに転移する。
ホットモールの中にあるタールさんの店に入る。
昼前だと言うのになかなかの盛況具合だ。
「いらっしゃいませ!1名様でしょうか?」
「いや、ちょっとタールさんに用事があってきたんだけど、今いるかな?」
「店長ですか?少々お待ちください。」
うん。
接客も行き渡ってますね。
繁盛するわけです。
ちらっとオーマルさんのとこも見てきたんだけど、オーマルさんは1人で接客してて、てんやわんやしてたな。
奥さん呼んで手伝って貰えばいいのに‥
「私に用事って貴方ですか?えっと‥あっ!開店前に寄られたお客さんですね。食べに来てくれたんですか?」
1度しか会ってないのによく覚えてたな。
「えっと‥今日は食事しに来たんじゃなくて、相談があってきました。先日見せてもらったタルタル神様の絵を少し見せてもらえないかと。」
「なんだ、残念。チキン南蛮以外にも色々タルタル料理のメニューを出す事になったから食べてもらえるとよかったのに。」
なぬ?
「色々なタルタル料理って?」
「ちょっと前に姉のところに行ってタルタル料理を教えてもらってきたんです。チキンカツの中にタルタルが入ったタルタルカツや、タルタルフライパン、玉ねぎの代わりに果物が入ったタルタルシャーベットなんてのもありますよ!私が店に出しきれてないメニュー合わせると、実に100種類は超えますからね。」
なんだと‥
今回の料理対決でフーラさんが出したタルタルエビフライは、フーラさんが考えたタルタル料理の1つに過ぎなかったのか‥
最初に出した料理で躓かなかったら、優勝したのはフーラさんだったんじゃないだろうか‥
フーラさんが優勝していたら、きっと俺は今頃見知らぬ土地で次の生活の場を探していた事だろう‥
背筋に冷たい汗が流れた‥
「そ、それじゃあ1番のおすすめをもらっていいかい?それと料理ができる間に絵を見せてもらっていいかな?」
「わかったわ!絵は1番の奥の個室に飾ってあるから、そのまま個室で待ってて。そこに料理をもってくるから。姉さんが個室が絶対必要になるから作っといた方がいいなんて言ったから作った個室なんだけど、今は絵を見たいって言う人に使ってもらってるんだ。」
「そうなんだ。時々使ってる人いるのかい?」
「そうね。時々いるわね。名前は聞かないんだけど、とても高そうな洋服を着た貴族さんとか。あとセイルズの司祭さんも人を連れて来たりしたわね。」
ど、どこまでタルタル教はその手を伸ばしているのだろう‥
タールさんに個室の場所まで案内してもらう。
「それじゃあ作ってくるから、少しここで待ってて。」
俺はタールさんが料理を用意している間に、絵を見ながら『影法師』の顔を作っていく。
1つ作っておいて、それを見本にして他のを作ればいいだろう。
本当はコソコソしなくても理由を話して借りる方がいいのかもしれない。
でも何故か理由を話さない方がいいような気がしてしまった‥
ちなみにタールさんが持ってきた、お姉さんが考えた料理はとても美味しく、俺の作ったビスクを上回る味だった‥
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