第539話
さてさて、スキル【アバター】を解除してもいいが、こんな所でドラゴンを野放しにするわけにはいかないよな。
解除した後に、かっこよく去った神聖国にまた襲撃に行ったりしたら目も当てられない。
とりあえず元いた場所に戻るとするか。
帰りは時間を気にする事ないので、スピードを上げて飛ぶ。
またセイルズの上を飛んだけど、相変わらずバタバタして俺の事を指差してるけど、僅かに手を振っている人がいる。
あ、アキーエがいる。
クワイス、あれため息ついてないか‥?
セイルズを抜けて、元いた場所まで戻ってきた。
着陸して体を休める。
体を貸してくれてありがとうな。
伝わらないのはわかっているけど、お礼を言ってスキル【アバター】を解く。
(此方こそ。なかなか珍しい物が見れて楽しかったよ。女神の使徒よ、またな。)
‥‥!!
俺の視界がいつもの部屋に変わる。
あれ?
今最後ドラゴンから語りかけてきたよな。
やっぱり高い知性を持ってたのかな?
そうじゃないと、あそこで大人しくしている意味がないよな‥
俺の事を女神の使徒って言ってたような‥
う〜ん‥
まあ今考えてもしょうがないか。
またなって言ってたし、気になるなら会いに行けばいい事だ。
気を取り直してベッドに座り、部屋を見渡すとアキーエがいた。
「今度こそお帰りなさいでいいのかな?」
「ああ。心配かけたな。ただいまアキーエ。」
「うん。お帰りなさい。」
すると廊下からバタバタ走ってくる音が聞こえる。
扉が勢いよく開く。
「マルコイさんお帰りですぅ!」
ミミウに少し遅れてアレカンドロもやってきた。
「ミミウ殿、流石ですな!スピードではとてもかないませぬ!がははは!マルコイ殿!お帰りなさいませ!」
アレカンドロ‥
笑い方がおっさんみたいだぞ‥
あれ?
キリーエがいないな?
「キリーエはどうしたんだ?」
「マルコイがセイルズの上空を飛んで行ったから、ピザの準備を始めたわよ。モッツァレラチーズ?ができたから食べてもらうんだって。あとドライイーストって言うのも出来たみたいな事を言ってたわよ。ちなみにリルはピザ切る役で一緒にいるわ。」
流石キリーエさん。
相変わらず仕事が早いですね。
そしてリルは何をしてるのだ‥
「それは嬉しいな。とりあえず出来上がったピザを食べたら、勇者たちを迎えに行って来るな。多分アースンまで来てると思うからさ。そしてセイルズに連れて来たら宴会をしようか?あいつら多分碌な物食べてなかったみたいだからさ。俺がキリーエに頼んで作ってもらってるのは、ほとんど勇者たちの故郷の料理だから喜ぶだろ。」
「それはいいわね。勇者の人たちには魔王を倒してもらわないといけないんでしょ?今まで大変だったと思うから、宴会で美味しい物食べて元気出してもらわないと。」
確かに。
神聖国に召喚されてなかったら、もう少しマシだったんだろうけど。
それに元々神聖国が召喚なんてしなかったら、あいつらがこっちの世界に来る事もなかったと思うし。
こっちの世界のやつが勝手に呼んで迷惑かけてるからなぁ。
どうにかして元の世界に戻してやりたいけど、すぐには無理だしな。
それなら待つ間美味しいものでも食べてもらって、せっかくだからちゃちゃっと魔王まで倒してもらおうかな。
いや、魔王は俺が倒してやる!なんて思ったけど、なんていうかなぁ‥魔王なんて俺たちだけで倒したら勇者認定されて、後々大変そうだなとか思ったりして‥
美味しい物を食べさせる代わりに、その辺の事を手伝ってもらおうかな‥
俺も頑張るけど、あくまで魔王倒すのは正人たちという感じで。
多分正人は受けると思うけど、あやめが文句言ってきたら、異世界料理を盾にして条件を飲ませてやろう。
決して愚王さんと一緒じゃないよ。
ちゃんと手伝ってくれるメリットはありますから!
さて、それじゃあ勇者御一行をお迎えに行きますかね。
ちなみにキリーエが作ったピザマルゲリータは顎が落ちました。
そしてミミウは涎の海に飲まれました。
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