第535話
辺り一帯に焦げ付いた臭いが漂ってる。
大神殿は支柱が何本か残ってはいるが、建物は原形を留める事なく破壊されている。
後方に被害が出ないようにするのと、地下に召喚の魔道具があったらいけないので、少し上から下方に向けてブレスを放射したので、まるで穴が開いたようになっている。
もちろん聖王は跡形もなく消し炭となった。
今までやってきた事を反省させようと思ったが、元々自分のやってる事は正しいと思ってるやつを反省させる事自体、土台無理な話だったわけだ。
だが、このまま終わりではない。
お前はこれからも愚王アロイジウスとして名を残してやるからな。
倒壊した建物の瓦礫の中に、魔力回路が描かれている研磨された黒い石の破片が落ちている。
召喚の魔道具も壊せたようだな。
でも魔力回路が勿体ないなぁ。
後でコソッと回収に来れないかな‥
『影法師』のイコルの姿に戻って、グルンデルにお願いしたら貰えるかな‥?
そのグルンデルは大神殿のあった場所に向かって祈りを捧げている。
さて馬鹿王はいなくなったけど、これからの神聖国をどうするかだよな。
こんな事やらかしたけど、この国の今後に携わるつもりはない。
でも、俺はこの国の事を考えて自分の命も差し出そうとしていた人に治めてもらいたいと思っている。
「皆のもの聞けい!神を愚弄した、お主らが担いでいた愚王は消え去った!これからこの国は新しい王を決めて治めるがいい。我はこの国にとどまるつもりもなく、これからこの国がどうなろうが興味はない。しかしお主らが愚王ではなく、聖王に治めてもらいたいと思うのであれば、女神の‥そして新しき神からの加護を持つこの男を王にすれば良い!」
その場にいる人たちの目線がグルンデルに集まる。
皆がグルンデルの言葉を待っているようだ‥
「‥‥‥貴方様の‥竜王様の命確かに承りました。私がこの国を‥信者のための国を作らさせていただきます。」
「ふん。我にとってはどうでもいい事であるがな。しかし!これでお主が王になるようであれば、我が言葉に従ったのだ。お主が愚王になるようであれば、また焼き尽くすぞ。」
「はっ!しかと受け止めさせていただきます!」
よし。
これでグルンデルが神聖国の聖王になるだろう。
タルタル神を崇めているところは減点だが、この人なら間違った事はしたいと思う。
まあ間違ってたら、またドラゴン召喚だな。
「竜王様よ!貴方様は神の御使様でしょうか?」
「そんな大それたものではない。ただ、自分の棲家に入ったコソ泥を捕まえに来ただけだ。」
俺がそう言うと、離れた場所で腰を抜かしていたイルケルが怯えたように頭を抱えて蹲る。
あんたには少しだけ世話になったからな。
これくらいで勘弁してやる。
まあこれから悪い事などする事はないと思うけど。
「はは!承知いたしました。またいつでもお越しください。神聖国は貴方様をいつでも歓迎いたします!」
この人、ドラゴン神認定しないよね?
神の御使でもないからね。
神認定とかしちゃったら、国を焼き尽くしちゃうぞ。
まあとりあえずこれでいいかな?
後の事は、この国の人たちに任せればいいだろ。
目的であった、勇者の救出と召喚魔道具の破壊は済んだ。
愚王アロイジウスは野放しにできない存在だったからな。
それを含めて神聖国での目的は全て果たせたと言っていいだろ。
後の面倒くさい事は全てグルンデルさんに任せればいいし、一件落着だ。
それじゃあ立ち去るとするかな。
「竜王様‥ありがとうございました。この国を代表してお礼をお伝えさせていただきます。」
俺はグルンデルを一瞥すると、体に魔力を纏わせて空に浮かぶ。
そして咆哮を上げて、セイルズに向かい飛び立った。
「タルタル神様の御使様よ。誠に感謝いたします!この神聖国の国教の1つとしてタルタル教を布教し、竜王様の事を語り継がさせていただきます!」
だからやめろって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます