第531話

ウルスート神聖国の大神殿をドラゴンの体で見下ろす。


大神殿では人が慌てた様子で行き来している。


聖王は大神殿で生活しているんだよな。

ならば俺の姿も目に入ってるはずだな。


俺は大神殿に向けて話かける。



「この国の王は誰だ」



大神殿、いや国中がざわつく。


それはそうだろ。

いきなりモンスターが飛んで来た上に、会話はできないとされているモンスターが話しかけてきたんだから。


「この国の王は誰だ」


俺は同じ言葉を放った。


しばらくすると全身鎧を纏った男が俺の前に現れた。


「ドラゴンよ!何用だ!」


「この国の王は誰だ」


俺は3度同じ言葉を投げかける。


「この国は偉大なるウルスエート様を祀る、ウルスート神聖国だ!この国を治めているのはウルスエート様の代行者である聖王様だ。」


「ほう‥ならばその聖王とやらを連れてこい。」


「ドラゴンよ!こちらは何用だと聞いている!」


「何故我が貴様らの問いに応えねばならん?いいから早くその聖王とやらを連れてくるがいい。」


「くっ‥」


全身鎧の男はこちらを睨みつけている。


もしかしてこいつが騎士団の団長か?



「ド、ド、ドラゴンよ。わ、我に何用だ?」


すると全身鎧の男の横に、細めの男性が現れた。


ん?

あの時覗いた部屋にいた男じゃないよな?


「オディル枢機卿‥何故貴方が?」


「せ、聖王様に仰せつかった。ド、ドラゴンの要件をき、聞いてこいとの事だ。」


小声で話してるようだけど、全部聞こえてるからね。


聖王のやつめ。

身代わりを出しやがったな。


ん?

その枢機卿の少し後方にあの時部屋にいた聖王と思われる男がいる。


後ろから様子を伺うつもりか‥


「お前が聖王とやらか‥?ならばお前に問おう。我の棲家に盗みに入ったのはお主か?」


「なんだ貴様は!トカゲの分際で聖王様を呼び捨てにするとはっ!」


すると騎士団長の後ろから、団長よりも更に厳つい全身鎧をきた男がやってきた。


「さ、さがれ副団長!」


「団長!何故このようなトカゲ如きが聖王様を呼びつけた上に、聖王様を呼び捨てにしたのを許すのですか!多少デカイだけのトカゲですよ!おい!トカゲ!その首を差し出せ!即刻切り落としてくれ‥あぶっ!」


俺はごちゃごちゃ言ってる奴を手で押し潰す。


お前のような奴がいると話が進まない。


押し潰した手を上げると、潰れた肉塊がくっついていた。

汚いな‥

俺は大神殿の壁に手を擦り付けて汚れを落とす。


「それで?我が棲家に入ったのはお前か?」


「な、なんの事だ!?我らはお主の棲家など入っておらん!」


「ほう‥ならばここから我が棲家にあった物の匂いがするのは何故だ?お主らに許可を出した覚えはないぞ。」


匂いなんかしません。

でも中にあるのは知ってます。

だって俺が持ち運びましたもん。


聖王は気づいたようだな。

苦々しい顔になってるぞ。


聖王が騎士団長を呼び何かを話している。


「どうした?思い当たる事があるようだな?」


「もしかしてお前の棲家とやらはセイルズの先にある遺跡の事か?」


「やはりお主らだったようだな!」


俺はその場で空が割れるほどの咆哮を上げた‥








(なんという事だ‥)


聖王アロイジウスは困惑していた。


先日、セイルズの傭兵団が保有している遺跡から魔道具を持ち帰らせた。


今まで各国から献上させた魔道具よりも数段高ランクの魔道具ばかりだったようだった。


高ランクの魔道具は持っているだけで他の国への抑止力になる。


ましてや勇者達のように感情を持ち、こちらのする事に疑問を持ったりはしない。


ただ使われるだけの兵器だ。

勇者を同じように兵器にするために洗脳したが失敗してしまった。


まあ勇者はまた召喚すればいい。

実験はいくらでも出来る。


しかし我が神聖国が各国よりも秀でておくためには、強い兵器が必要だ。


そう思い魔道具を集めてきたが、まさかこのような化け物を呼び寄せる事になろうとは‥

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