第530話

ドラゴンの体で空を疾走する。


ドラゴンの翼で飛ぶというよりも、魔力を覆って浮いている体を翼を使って前に進めるといった感じだろうか。


しかし俺が羽根人形を使って飛ぶよりも遥かに早い。


このままのスピードで行くと、予定の時間よりも少し早く着きそうだ。


少しスピードを落として時間を調整する。


すると下の方が何か騒がしい。


下を向いてみると、街があり住んでいる人が俺を見上げながら何か叫んでいるようだ。


俺が【アバター】を使った場所から、神聖国に飛ぶ途中にある街となるとセイルズかな?


見覚えのある建物がチラホラある。


あれは『アウローラ』の拠点かな?









「クワイスさん!すぐに表に出てください。」


ラケッツが団長室に駆け込んでくる。


「どうしたラケッツ!何があった?」


『アウローラ』傭兵団の団長、クワイスはラケッツの形相を見て慌てて駆け寄る。


「そ、そ、そ、そらにドラゴンがっ!しかも今まで見た事もないような馬鹿でかいサイズのドラゴンです!」


「な、なんだとっ!メンセン!すぐに団員を武装させて表に出させろ!」


「わかった!」


メンセンは部屋を出て、拠点にいる団員に声をかける。


クワイスはそれを横目に見ながら、急いで外に出る。


すると恐ろしい速さでこちらに向かってくるドラゴンの姿が目に入る。


「なんだあのサイズは‥あんなものどうやって戦ったらいいんだ‥」


絶望が空から突然迫ってきた。


こんな時に頼りになるマルコイは神聖国に行っていると聞いている。


今から呼んで間に合うだろうか‥


そんな事を考えていると、横から女性の声が聞こえる。


「別に戦わなくていいのよ。あれマルコイだから。」


「へ?」


おそらく人生で1番間抜けな顔をしているクワイスの横で、赤髪の女性アキーエがドラゴンに向かって手を振っている。


するとセイルズの上空でスピードを落としたドラゴンがこっちを見て、器用に腕を振りかえしてきた。


「はあ!?なんでマルコイさんが空飛んでんの?いや飛んでたかっ!いやドラゴンって何?マルコイさんドラゴンなの?ドラゴンがマルコイさんなの?」


そんな興奮しているクワイスの横で、何故か幸せそうな顔をしてドラゴンに手を振るアキーエ。


「はあぁぁぁ‥‥‥」


「クワイス!ドラゴンはどこだっ!?」


そこにメンセンが飛び出してきた。


それを見てクワイスはため息を更に深める。

そしてドラゴンを指さす。


「あれがドラゴンで、ドラゴンはマルコイさんだ。」


「はぁ?」


ポカンとした顔をしてドラゴンを見上げるメンセン。


「何かよくわからないけど、あのドラゴンもマルコイさん絡みって事か?なら‥安心だな。」


「そうだな‥」


そんな会話をする横で、アキーエはまだ手を振り続けていた。








『アウローラ』の拠点でアキーエが手を振っている。

頑張れって事かな?

任せとけ。

俺は手を振り返す。


アキーエを上に乗せて空の散歩でもしたいとこだけどなぁ。


そのためにもさっさと神聖国の問題を解決してきますかね。


最後に大きく手をふって神聖国に向かう。


時間的にもグルンデルに伝えていたとおり昼くらいになるかな。


俺は大きな翼をはためかせて神聖国に向けて空を飛ぶ。




しばらく飛んでいると神聖国が見えてきた。


セイルズの街と同じように俺を見つけて騒ぎ出している。



そのまま俺は神聖国まで飛び、上空で止まる。


神聖国の騎士団や信者たちが集まってくる。


信者は俺の姿を見て、慌てて家の中に戻っていく。


騎士団の騎士たちは何とか指示を受けて動きはしているが、腰が引けてるな。



しばらくそのまま飛んで、街を見渡す。


そろそろ動き出してるかな?


俺はゆっくりと街の中でも、一際大きな建物に向かって飛ぶ。


ウルスート神聖国の大神殿に向かって。

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