第514話

目の前で縦方向に爆炎が上がっている。

まるで炎の竜巻のようだ。

竜巻はその場から動かずに、竜巻の中にあるもの全てを焼き尽くしているようだ。


しばらくして何事もなかったように竜巻が消えた。

魔法で作られた物であり、自然に発生した物ではないため消える時も突然だ‥


竜巻があった場所は全ての物が灰と化していた。


もちろん‥


俺が作ったレンガも‥



「えへっ!やりすぎちゃった!」



可愛くポーズをとりながら謝るアキーエ。

その額に一筋の冷汗が流れているのを俺は見逃さなかった‥


「ア、アキーエ。わかってると思うけど、明らかに火力が強すぎだ‥」


「うん。ごめんね、てへっ!」


「アキーエ‥無理するな‥てへって‥」


「だ、だって、久しぶりにマルコイに頼られたから気合が入り過ぎちゃったんじゃないっ!」


アキーエが地面に座り込んで、地面に『の』の字を書いている。


「いやいや、いつも頼りにしてるよ。アキーエがいるから俺はパーティ任せて自分のやりたいようにやってるんだから。アキーエが俺の帰る場所なんだけらさ、無理しなくてどーんとしててくれよ。」


「‥うん。ありがとう。」


そんな風に思わなくていいのにな。

でもちゃんと言葉で伝えてなかった俺が悪いよな。


「いや、こっちこそありがとうな。」




「ほら、そんなとこで惚気んでええから。続きは家に戻ってからマルコイさんの部屋でしてや。まだピザ窯途中やし。」


おおう!

みんなが見てるの忘れてた。


「ごめんごめん。それじゃあもう一回レンガを作るから、アキーエ今度はもう少し小さめの火でお願いするよ。」


「うん、わかったわ。」


同じようにレンガを作り、今度は小さめの火でアキーエが焼き入れをしてくれた。


出来上がったレンガを重ねて窯を作る。


今回は下で火をつけて上でピザを焼く、二層式のピザ窯にする。


ピザを焼く方の奥に隙間を空けて熱が循環するようにする。


ピザが落ちないように奥側を一段高くしておく。


よし!

これでピザ窯の出来上がりだ。


「マルコイさん!これでピザが出来るですか?」


「これはピザを焼くための設備だ。これからピザを作って、ここで焼くんだ。顎が落ちるほど美味しいらしいぞ!」


「わーい!顎が落ちるですぅ!」


「なんやて!それならポーションも用意しとかんと!」


いやいや、比喩です。

ポーション用意してまで食べる料理とかどうなのそれ?


それでも食べる気満々のミミウがちょっと怖いんですけど‥




それじゃあピザ生地を作っていこう。


小麦の粉にベーキングソーダを入れて、オイルを混ぜてしっかりと練り込む。


ベーキングパウダーとかあればもっといいだろうし、確か異世界にはドライイーストなんてのもあるみたいだな。


キリーエはお酒を作る時に酵母菌も作ったみたいだから、多分ドライイーストも作れるよな。


今度頼んでみよう。

またより一層食生活が豊かになるなぁ。

勇者たちを脱国させるために色々やったけど、もしかしたら食べ物で釣るのが1番手っ取り早かったんじゃないだろうか‥


ま、まあいい。

やってしまったことに後悔はない。


しばらく置いて膨らんだ生地を切りわけ、色々な具材を乗せるために広げていく。


異世界の人がやっている手に乗せて広げる方法をやってみたら、飛んでいってアキーエの顔に直撃したので、手堅く棒を使って押し広げる。


ちなみに飛んで行った生地は丸めて焼いて食べました。

ミミウが。


さて生地は完成したので、後は具材だな。


生地に塗るトマトソースを作るためトマトを切り、玉ねぎやニンニクを入れてオイルで煮る。


煮詰まってきたら、塩などで味を整える。


少し味見をしてみたが、酸味のあるいい味だ。


こらこら、ミミウさん。

味見は少しですよ。

お玉ですくって飲むのは味見とはいいませんよ!


さてあとはチーズを作って、燻製肉でも乗せたら完成だ!

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