第512話

俺は慌てて背後を振り返った。


するとすぐそばにメモ帳を持ったキリーエと、なぜか涎を垂らしているミミウがいた。


もうね、俺が作るびっくりハウスより、よっぽどこの2人の方が驚かすのうまいんだけど‥


心臓が喉から飛び出すかと思った‥


「ふ、ふたりともただいま。」


「おかえりなさいですぅ!」


「おかえり、マルコイさん。で!今から作る?」


な、なんの話だ?

今から作る?


「マルコイさん、ピザ?っていうやつ作るんやろ?手間のかかる料理やったら今から準備をするんやないかなって思って。」


「わーい!ピザですぅ!食べるですぅ!じゅるる‥」


もうね、読唇術とかじゃないよね。


俺が発信機で、2人が受信機。


すごいね、食べ物や商品化に繋がりそうな物に対する反応‥

反応なんだろうか‥?


察知?

予知?


とにかく凄いって言葉では解決できないと思いますけど‥


俺が神聖国に人形で行ったとしてもわかるのだろうか‥?


いや、この2人ならわかる気がする。


それとミミウはピザが何かわかってないはずだぞ。

食べ物じゃなかったらどうするつもり?

いや‥食べ物だってわかってる気がするな‥


「そ、そうですか‥」


ミミウとキリーエの目がキラキラしている。


「はぁ‥そうだな!せっかくだからピザパーティーでもするか!」


「わーい!やったですぅ!」


「さっすがマルコイさん!ささ!うちは何を準備したらええ?」


う〜ん‥

ピザかぁ。


ピザ窯は俺のスキルで作るとして‥

生地も問題ない。

後はチーズとトマトソースだな。


チーズはとりあえずすぐ出来るなんちゃってカッテージチーズでいいかな。


「いるのはチーズとトマトソースなんだけど、とりあえず手持ちで出来る分でやってみるよ。本当はモッツァレラチーズとかゴーダチーズなんかの方がピザにはいいんだけど、すぐには出来ないからね。」


「はいはい!」


「はい、キリーエさん。」


「そのチーズは時間をかければ作れますか?」


「そうだなぁ。ゴーダチーズなんかは発酵する必要があるけど、モッツァレラはフレッシュチーズって言われてて、発酵が必要ないチーズなんだけどね‥」


「ふんふん。だけど?」


「レンネットって言う牛の乳を固まらせる物が必要になるんだ。それが牛や羊の胃袋の消化液の抽出物みたいなんだよね。そしてこれが大きくなった家畜からは取れなくて、子牛とか子羊だけみたいなんだ。だから準備するのに多少の時間がかかるかな。」


「なるほど!せやったら、ホット商会で提携している酪農があるから、そこで用意するわ!せやからマルコイさんがここを離れる前に教えてもろたら、マルコイさんが帰ってくる頃にはモッツァレラならできるようにするわ!」


おおう。

提携してる酪農とかあるのね。

まあホット商会は牛の乳をよく使うから、必要なのかな。


「それじゃあ後で説明するよ。あとはトマトソースもトマトがあれば後は玉ねぎやニンニクと煮込むと出来るから大丈夫だろ。」


生地も小麦の粉はあるし、ベーキングソーダがあるからすぐ出来るしな。


「まずはピザを作るためにピザ窯を作ろう!」


俺はピザ窯を作るために家の庭に出る。



「はぁーっ!」


木同士がぶつかり合う音と、アレカンドロの気合いの入った声が聞こえてきた。


庭ではリルとアレカンドロが模擬戦をしていた。


もう何度目になるのか、アレカンドロは全身に汗を滴らせていた。


それに対して、リルは多少息が上がっているようだが、まだ余裕があるみたいだな。


アレカンドロが斬りかかり、何度か木刀を合わせたかと思えば、リルが力を抜き体勢を崩したアレカンドロに木刀を寸止めする。


「参った!いやーリル殿は強いですな!これで自分の0勝73敗になりますな!」


「でもアレカンドロは凄いね。私は物心ついた時から人と闘うために訓練してきたんだ。それなのに、アレカンドロは最初こそ全然だったけど、今は油断するとこっちが負けるくらいに成長してる。」


「自分も子供の頃からモンスター相手には戦ってましたから!」


笑顔でアレカンドロの手を取り、引き起こしているリル。


‥‥‥。


いやいや、なんでそんなに模擬戦してるのっ!?

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