第510話
「俺は此処から出ない。扉の近くに魔道具を出すから、お前たちで騎士に渡してくれ。全員が目一杯持てば、持ち帰れる量にするから。」
今後の事を決めてから、勇者たちを外に出す為に準備を始める。
「わかったわ。マルコイありがとう。」
「気にするな。俺がやりたいからやってるだけだ。」
「またそんなこと言って。そんな事言うと、惚れちゃうからね。」
あやめが頬を少し赤くしてそう言う。
「いや、惚れなくていいから。あやめみたいにガチャガチャしたやつに惚れられると大変そうだから。」
「マルコイ!あんたね!こんな可愛い娘が恥ずかしがって言ってるのに、その返しはないでしょ!」
自分で可愛い娘とか言ってる奴は勘弁だ。
俺にはアキーエさんがいますから。
「ほんっとにもう!」
あやめは頬を膨らませて、ぷりぷりしている。
はい、可愛い可愛い。
そして部屋の入り口付近まで来て、『スペース』に入れていた魔道具を取り出す。
大きめの武器や防具がほとんどだ。
怪しまれない程度に装飾品も付けておくが、基本は大きな魔道具ばかりだ。
「トラップは解除しているから、問題なく地上まで出れると思う。騎士たちは『アウローラ』の拠点には寄らないと思うから、セイルズの船着場の近くで待っておく事にする。それと‥」
俺は『スペース』から人形を取り出す。
「この人形に俺は移るからな。俺から話しかけるとは思うけど、騎士の説得は頼んだぞ。」
「わかったわ。」
「それと‥」
期待させたら悪いので言わないつもりだったが、恵の説得材料になるなら言っておいた方がいいかもしれない。
「神聖国は元の世界に戻す手段を本当は持っているのかもしれない。だが還す気はないと思う。でも落胆するな。俺にはスキル【時空魔法】がある。もしかしたらLvが上がれば元の世界に戻す事が出来るかもしれない。あくまでも可能性の話だがな。」
「えっ!それ本当?」
「ああ。だがあくまでも可能性があるかもって話だ。あまり過剰に期待するな。でも神聖国に頼るよりも可能性は高いと思うぞ。」
「わかった‥恵も喜ぶと思う。本当にありがとうね。」
「バカか。ありがとうってのは本当に帰れた時に言え。」
「それでも‥それでも‥」
あやめはその場で蹲った。
せっかくこの世界で生きていく覚悟を決めたのに余計なお世話だったかな。
でも人は何か生きる目的があった方が頑張れるだろう。
それは異世界もこの世界も同じはずだ。
ここまで関わってしまったらしょうがない。
少しはコイツらのために頑張ってみてもいいかなと思っている。
「あんまり期待せずにのんびり待ってろ。」
「わかった!マルコイ本当に最高!」
あやめは唇に指を当てて、こちらに向けて何かを渡すような仕草をする。
俺の勘がこれは避けろと頭の中で警報を鳴らす。
俺は全力で反り返って何もない空間を避ける。
「なんで投げキッスを避けるのよっ!あたしの気持ちをそんなに全力で避けるんじゃないわよっ!」
「ふむ。投げキッスと言うのか‥恐ろしい技だな‥頭の中で、もの凄い警鐘が鳴ったので身体が反応した。」
「マルコイあたしの事なんだと思ってるのよっ!」
む?
あやめの事をどう思っているかだと‥
ふ〜む‥
「お?考えてるわね。そうよね、こんなに可憐な女子高生に対して何も思わないなんて‥」
「リアクションお化け?」
「よーしマルコイ!そこに直りなさい。あんたとは一度本気で勝負をつける必要があるみたいね。」
「え、やだよ。」
「ムッキィーーーーッ!」
「おお!あやめ。楽しそうじゃん。」
「お前はうるさーい!」
あ、正人がどつかれた。
全くうるさい奴らだな。
まあこんな奴らだから、多少なりとも手助けしよつと思ったんだけどな。
さてコイツらを上手く脱国させるためには、もう少し手伝ってやらないとな。
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