第505話

「な、何が起こった!?いやそんな事はどうでもいい!」


隊長をぶっ飛ばした奴が気になったようだけど、それよりも隊長の凶行を止めるのを優先したようだ。


それはいいのだが、何故か正人が俺の方を見ている。

隊長を攻撃した後は、誰にも見られないように素早く部屋の角に移動したんだけどな。

それにただのスライムだから気にしなくていいんだぞ。

お前も勘が鋭いのか?



「た、隊長!正気ですか!勇者様に剣を向けるなど!勇者様は女神ウルスエート様の御使様ですぞ。それを小娘など!」


騎士は立ち上がり、あやめに向かおうとしている隊長を羽交い締めにして、何故あんな凶行に及んだのか聞き出そうとしている。


やめとけやめとけ。

そいつはお前たちが信頼を預ける事ができるような奴じゃないぞ。


「うるさい!貴様らは隊長の俺の言う事を聞けばいいのだ!あの小娘は俺を殺そうとしてきたのだ!ならば殺される前に殺さねばならん!」


血走った目であやめを睨み殺すように見つめる騎士。


「行け!お前らであの小娘を殺すのだ!どうした?行くんだよ!隊長の命令が聞けんのか!」


騎士たちに動揺が走る。



おいおい。

明らかに隊長おかしくなってるだろ。

そんな奴の命令を聞く方がどうかしてると思うぞ。



「貴方がそう言うのなら、あたし達にも言える事よね。貴方があたし達を殺そうと言うのなら、殺される前にあたし達が貴方を殺すって事も道理よね。」


そうあやめが告げる。


羽交い締めにしている騎士が驚いた表情を見せる。


まああの発言がなければ自分たちではなく、自分たちを偽るモンスターが出て、そのせいで隊長がおかしくなったのでは?なんて言ってたかもしれない。


でもいずれ自分たちを殺そうとしてた奴を、流石に平和な世界からやってきた勇者たちでも許せなかったか。


「で、ですが勇者様‥」


「ほら見ろ!本性を表したぞ!俺が言った通りだっただろうがっ!行け殺せ!殺せ!」


騎士たちも困惑している。


こいつは放っておくと害悪でしかないな。


このままじゃ埒があかん。

それじゃあサクッと殺しますか。


「わかった。とりあえず放せ。このままじゃ話もできん。」


隊長にそう言われて、羽交い締めにしていた騎士の力が弛む。


なぜ離すかね?


すると隊長は猛然とあやめに向かい走り出した。


「死ねーーーーっ!」


突然の事で騎士たちは対応できずにいる。


あやめたちは隊長が向かってきてもいいように構えている‥が‥




「あひゃあ!」


突然あやめに向かっていた隊長の足元の床が抜ける。


そしてそのまま隊長は落とし穴に落ちていった。


「ひぁーーー‥‥‥」


隊長の声がこだまする。


少し長めの縦穴にしたからな。


もちろんそのまま落ちて絶命するだろうし、しなかったとしても這い上がってくることはないだろう。


そして何事もなかったように落とし穴の蓋が閉じる。


「あ、あ?た、隊長!」


騎士たちが落とし穴の前まで進み蓋が開かないか周りを確認している。


いやその落とし穴もう開かないよ。

開ける気もないし、開けたくもないからね。


あんな奴はもう痕跡も残さなくていいです。



しばらく落とし穴を調べていたが、開かない事がわかったのか、騎士たちが勇者たちの方に歩いてきた。


お前たちも隊長と同じようなら第2第3の落とし穴が発動するぞ。


それとも六腕ピエロの戦闘タイプでも送り込もうか?


会話出来ないけど、六腕でむちゃくちゃな攻撃します。

多分冒険者Aクラスあたりだと勝てそうなくらい強いです。


「勇者様‥隊長が‥いや勇者様に剣を向けた罪人については、私達で報告いたします。それよりも先に進みましょう。」


よかった。

お前たちまで殺すことになると、帰ってあやめたちが怪しまれると困るからな。


「はい。わかりました。」


「ういっす!」


正人たちと騎士たちが先に進み出す。


もう仕掛けもないから大丈夫!


そして最後の扉の前にたどり着いた。


その扉には二つの文が書いてあった。


1つは『光を纏し者のみ中に入る事。それ以外の者が入ればその身を滅ぼされん』と書いてある。


でもそれはフェイクでもう1文が大事なんだけどね。

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