第504話
「なんの冗談よ‥何のために今まで‥」
帰れないかもしれない‥
そううすうすは気づいていたのかもしれない。
それでもあやめと恵は微かな希望を持って神聖国のために動いていたんだろう。
それが木っ端微塵に砕かれた。
遅かれ早かれ気づく事だったかもしれないし、俺が放っておけば最悪、騎士が言っていた通りになったかもしれない。
だからここで気づけたのはよかったのだと思う。
しかしそれでも俺のせいでその答えに辿り着き、落ち込んでいるあやめを見ると申し訳ない気になってくる。
「あやめよかったじゃん!」
その時正人があやめに声をかけた。
「俺たちラッキーじゃんか!だって先に気づけたんだぜ!元の世界に帰る帰らないは置いといて、この遺跡に来たおかげで知る事ができたじゃんかよ!うぉー、スッゲー。俺らちょーラッキー!」
あやめがポカンとして正人を見ている。
「はあぁぁ‥‥‥‥。あんたは本当に前向きというか能天気というか‥。そうね、問題は沢山あるけど知る事が出来たって事は確かによかったことよね。よし!まずはここから出て、今後の事はそれから考えましょ!」
ははは。
助かった。
ありがとうな正人。
あやめの心が折れそうだったけど持ち直した。
俺じゃそんな風にはいかなかったと思う。
なんだかんだいいながら、あいつらはいいパーティなんだろうな。
さて、それじゃそろそろ終結と行きましょうかね。
正人たちが進む方の壁を操作して出口に向かわさせる。
狂化した騎士はほっとくとして、集団でいる騎士の方も同じように出口までの道のりを作る。
しばらく道を進んでいると、両方とも出口にたどり着いた。
「正人様にあやめ様!ご無事でしたか!」
騎士たちがあやめたちに走り寄ってくる。
「え、ええ。何とか無事でした。」
「よかった!私達の任務は勇者様達の護衛でしたから、出口にいらっしゃらなかったら再度迷宮に入るところでした。」
こいつらは本気で心配していたようだな‥
もしかして勇者を始末するように依頼されているのを知っていたのは、あの偉そうな騎士だけだったのか?
「ところであやめ様。隊長はお会いされませんでしたか?何やら怒っているような声は聞こえましたが、何に対してなのかわかりませんでした。多分隊長1人とは思うのですが、もしかしたら中でモンスターにでも遭遇したのかもしれません。申し訳ありませんが、しばらくここで待機して出てこない様であれば中に救出に行こうと思います。」
う〜ん、そうきたか。
今の状況では、出て来れないし中に入っても会う事はできないんだけど‥
しょうがない、少し危険だけど外に出すか。
俺は壁を操作して狂化した騎士が出口に出れる様に壁を操作する。
そして念の為に、俺も一旦地上に降りる。
うおっ!
危ない、人のつもりで着地しようとしたらスライムだったから足がなかった。
潰れるように着地したので、死ぬかと思った。
スライムってこの高さから落ちたら死にかけるのな‥
潰れた身体を元に戻している間に狂化した騎士が出口にやってきた。
「はぁはぁ‥やっと見つけたぞ小娘がっ!」
あやめを見つけた瞬間に、あやめに攻撃しようと駆け出した。
「なっ!隊長!何を!」
おいおい。
さっさと止めないか。
しょうがない‥
あんまり出るつもりもなかったのだが‥
俺はスライムの身体でエンチャント:風とエンチャント:土を使う。
そして身体をしならせて、矢の様に騎士に向かって飛び出す。
必殺!
粘体流星破壊弾!
俺の身体は流星のように真っ直ぐ飛び、騎士の顔面に飛び込んだ。
「ごわっぷ!」
騎士は変な声を出しながらぶっ飛んだ。
恐るべきはスライムボディ。
まあスライムの身体とはいえ、エンチャント:土を使って硬化した身体で突っ込んだからな。
しかしやはりスライム‥
エンチャント2つ使ったら魔力が底を尽きそうだ。
まだスキルを使わないといけないから温存しないと。
【スードウクリエイター】は壁を作り出さずに、動かすだけだから、そんなに魔力は使わなかったけど、エンチャントはやばいな。
そしてぶっ飛んだ騎士は、別の騎士たちが取り押さえる事ができたようだ。
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