第495話
ラケッツさんは他の団員の人と話をしていたけど、俺を見つけた瞬間に直立不動になった。
「マ、マ、マルコイさん!お疲れ様です!クワイス団長ですか!わかりました、すぐに探してきます!」
ラケッツさんが俺から全力で逃げようとする‥
俺はエンチャント:暴風を使って、ラケッツさんの前に回り込む。
逃がさん。
「ラケッツさん。クワイスじゃなくて、ラケッツさんと話がしたいと思って探してたんです。少し話しできますか?」
見る見る顔が歪むラケッツさん。
そんなに怖がらなくても‥
そんなひどい事したかな?
したな‥
「いや、ラケッツさんに渡した鎧なんですけど、試作品なんですよ。出来ればラケッツさんにもっと安全に使ってもらいたいので、何か意見がないかなと思って。」
「まじっすか?本当はもっと面白くしようとか思ってないっすか?」
うっ‥
「ま、まさか思ってないよ。でも出来ればラケッツさんに渡した鎧を使っての戦闘術なんか考えたら面白いかなとは思ってる。爆発を利用した受け身だったりね。あとは一回の戦闘で鎧を付け替えないといねないのは非効率的だから、そこもどうにかしたいとは思ってるんだけどね。」
「そうっすね。ただ、俺は戦えるスキルは持ってないから、今回の鎧で助かったところはあるっす。でもできれば攻撃手段も欲しいっすね。」
「そういえばラケッツさんのスキルって何なの?」
「俺のスキルは【同期】ってスキルっす。戦っている相手と身体能力を同じにするスキルっすね。」
え?
それってすごくない?
「今マルコイさんすごいって思いました?でもこのスキル、モンスター相手にはできないし、同期した相手のスキルは使えないんすよ。だから冒険者になってみたものの、満足に戦えないし頭も良くないから身体使う仕事って事で傭兵になりました。でも『アウローラ』だと仕事もちゃんと回してもらえてるんで感謝してるっす。」
なるほど。
それだと使い道はあまりないのかもな。
どういう基準かわからないけど、自分と相手が戦う状態になってないと同期できないなら、確かに使い道がないかも‥
「でもラケッツさん冒険者登録もしてたんだ?それじゃあ冒険者のギルドカードも持ってるわけ?」
「一応持ってるっす。まあ使うことなんいすけどね。」
そう言ってラケッツさんはギルドカードを見せてくれた。
ラケッツ
冒険者ランクE
スキル【同期】
「冒険者ランクは上げる前に諦めたっす。俺じゃやっていけないって。そんで傭兵になろうと、こっちに来たんすけど、来た初日にメンセンさんに絡みまして。恥ずかしい話、あの頃はちょっとやさぐれてたんすよね。そんでボコボコにそれて、『アウローラ』で鍛え直してやるって拾ってもらったっす。」
なるほどね。
ちょっとガラが悪いのは、そんな過去があったからなんだ。
「それで【同期】ってどうするんだ?今の俺相手に使えるのか?」
「そうっすね。俺とマルコイさんが相手を敵と認識したら【同期】できるっす。」
「なるほど。それじゃあちょっとやってもらっていい?」
「えっ‥別にいいっすけど、敵意出したからって俺の事ボコらないでくださいよ。俺死にたくないっすからね?」
だから君は俺を何と思ってるのかね?
俺はラケッツと睨み合う。
しばらくそのままで時間が過ぎる。
「マルコイさん。俺の事を敵と思ってください。相手に敵意がないと、スキルが使えないっす。」
「わかった。」
俺はラケッツを倒すイメージを頭の中に描く。
「マルコイさん。【同期】できました。」
なるほど。
こっちには全くそんな感覚はないんだけど、同期できたんだな。
しかし俺がイメージしただけですぐにスキルが発動するって事は、ラケッツさんは準備万端だったって事か‥
俺の事嫌い‥?
「おお!さすがマルコイさん。身体がおそろしく軽くなったっす。今ならメンセンさんともやりあえるような‥」
うん。
今すぐボコボコにされなさい。
(ピコーンッ)
お?スキルを模倣したみたいだな。
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