第491話
「おはようさん。今回道案内に抜擢されましたラケッツと申します。よろしくお願いしときます。」
朝早く宿の出入り口に昨日傭兵団の中に案内してくれた男の人が立っていた。
ラケッツさんは昨日とは違い、鎧をつけている。
丸みを帯びた木製のパーツが幾つもついている。
これが鉄製だと動けなくなるくらい重いと思うけど、木製だから軽いんだろうな。
このラケッツさんだけど、なんだか知ってる人に似てる気がして好感が持てる。
「ちーっす!俺は勇者の正人っす!よろしくお願いするっす!」
あ、似てる人正人だったわ。
そう思うと好感度が少し下がった。
「ふん。貴様が道案内か。それではさっさと連れて行け。早く魔道具を持って聖王様にお届けせねばならん。」
「わかってんよ。でも俺は遺跡の入り口までしか案内できないぜ。まだ中に入る資格がないからよ。まああんた達くらいの人なら、中の案内なんていらないだろ?」
「当たり前であろう!貴様はさっさと入り口まで案内すればいいのだ!貴様ら如きが中に入って魔道具を回収する事が出来る遺跡だ。神聖国の騎士団である我らが遅れをとるはずがない!」
「はいはい。わかりましたよ。それじゃあ出発するぜ。」
そう言いながらラケッツさんは遺跡の方に向かって歩き出した。
ラケッツさん‥
凄く悪そうな顔して笑ってたのは気のせいだろうか‥
ラケッツさんの案内で遺跡までたどり着いた。
地下に潜るタイプの遺跡のようだ。
神聖国に指示されていつくかの遺跡にアタックしたけど、それらの遺跡に比べると随分と新しいような気がする。
まるで最近作られたみたい。
でも階段は長く続いていて、今の異世界の人達では作る事はできない事はわかっている。
まあ中が普通の体育館くらいの広さだったら、1〜2年頑張ればできるのかな?
「案内はここまででよい。後はアジトにでも戻るがいい。2〜3日もすれば終了するだろう。その後にでも中の確認をするのだな。」
「はいはい。そんじゃ頑張ってください。」
そう言ってラケッツさんは元来た道を引き返しだした。
それを見て騎士団の人達は遺跡の中に入っていく。
あたし達もついて行こうとすると、ラケッツさんが戻ってきて、あたしの手に何かを渡した。
そしてラケッツさんはウィンクしてその場から走り去った。
渡された物を見ると、とても綺麗な色をしたポーションだった。
一目で上級ポーションだとわかる。
あたしはラケッツさんを探したけど、ラケッツさんの姿はもう小さくなっていた。
なんでこんな高価な物を渡されたのか意味がわからない。
返すつもりだけど、遺跡の中に入るのにお守り代わりにポケットに入れておこう。
あたしはラケッツさんが走り去った方に頭を下げて、騎士団の人達を追いかけるように遺跡に入った。
遺跡の中はひんやりとしていた。
でも中は傭兵団の人達が付けたのか、灯りがつけてあってそこまで暗い印象はない。
階段を降り切ったら、中は迷路のようになっていた。
進むためには歩くしかないみたい。
あたしが来ててよかった。
恵はお嬢様だから、あんまり歩くのは慣れてない。
それでも元の世界に帰るために頑張って神聖国に言われた通りに各国をまわってたけど。
騎士団の人達について歩いて行く。
すると奥の方から何かを引き摺るような音が聞こえてきた。
だんだんと音は近づいてくる。
迷路の曲がり角からその音の原因が現れた。
足を引き摺るように歩いてくる二足歩行のモンスターだ。
でもこんなタイプのモンスターなんて見た事ない。
騎士団の人達が陣形を組んで対応する。
そして攻撃しようとした瞬間に‥
床が動いた。
あたし達も一緒にモンスターの方に引き寄せられる。
転がって体勢を崩した無防備な状態でモンスターの目の前まで引き寄せられた。
やられる!
そう覚悟して目を瞑った。
しかしいつまでも攻撃が来ないので、目をゆっくりと開けると‥
目の前でモンスターがあたしの顔を覗き込んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます