第489話
「おお〜!すげーじゃん!結構栄えてるっぽくね?」
確かに今まで見てきた街に比べたら随分お店も多い。
でもアースンのショッピングモールを見てしまったあたしとしては物足りない‥
「おいあやめ!チキン南蛮があるぜ!まじかよ!こっちには鰻の蒲焼きまである!うっひゃー!何ここ?マジ天国!」
え?
ウソ?
なんでそんな物がここにあるわけ?
異世界に来てから、元の世界の食事はマルコイが関わったショッピングモールにしかないと思って‥
‥‥。
異世界でそんな都合よく元の世界にあった料理があるはずないよね?
マルコイが関わってる感じが物凄くするんだけど‥?
「おいおい!マジかよ!ギターまであるじゃん!これちょっとすごくね?マジ神じゃん!あー!あやめ!あそこ見てみろよ!黒ひげまであるじゃんか!」
正人のテンションがバカみたいに上がってる。
まあわからないでもない。
異世界に来てから、元の世界の物に触れる事なんてなかったからね。
私までテンション上がってくる!
ここにはやっぱりマルコイの足跡がある気がする。
「正人様、あやめ様。これから傭兵団のアジトに行きます。くれぐれも気を引き締めて下さるようお願いします。」
「わかってるっすよぉ!でもこれ見たらテンション爆上がりっすから、ちょっとは見逃してもらえないっすか?」
「聖王様の指示はセイルズの観光ではありません。」
はいはい。
「正人。先に要件を済ませてから見に来ましょう。」
「ちぇっ!うーっす。」
騎士団の目があるから大人しくしとかないと。
もしここにマルコイがいるなら会えたらどうにかして会いたいけど、それまではバレないようにしとかないと。
あたし達はセイルズの観光を諦め、目的の傭兵団のアジトに来た。
アジトには『アウローラ』って書いてある。
「誰かおらぬか!」
騎士団の1人が大きな声で人を呼んでいる。
なんでそんな威圧的な言い方しか出来ないんだろ?
しばらくして、若い男性が出てきた。
「なんだお前ら?ここを『アウローラ』の拠点と知って来たのか?」
「ふん。でなければ、こんな小汚いところにわざわざ足を運んだりせんわ。さっさとお前らの代表に会わせよ。」
わざわざ敵を作るような言い方。
こんなもん異世界ヤ◯ザだわ。
「おうおう。そりゃわざわざ小汚いところに来ていただいてありがとうございます。それじゃ団長に確認してくるから、ここで待ってろ。」
男の人はそう言うと中に戻っていった。
それを見て騎士団の人は忌々しげな顔をしている。
すぐに男の人が戻ってきた。
「おう。団長が会うってよ。ついてこい。」
「貴様!口の聞き方を知らんのかっ!」
騎士団の1人が声を上げ、剣を抜こうとしている。
「やめておけ。神聖国の偉大さもわからぬ奴だ。斬ると不浄が移るやもしれん。それにまだ此奴らには用がある。」
「はっ!申し訳ありません。」
騎士団の人達がそんなやりとりをしてる間に、男の人はさっさと中に入ってしまった。
ぐっじょぶ!
思わず笑みが溢れてしまう。
こめかみをピクピクさせながら、騎士団の人達も中に入っていった。
案内された部屋に入ると、中に男の人が2人いた。
1人は濃い紫色の髪を後ろで束ねているナイスミドルなおじさまだ。
そしてもう1人は‥
筋肉マシマシのハゲマッチョさんだ。
「ようこそ傭兵団『アウローラ』へ。神聖国の騎士団様がうちに何の用だ?」
「ふん!要件は2つだ。1つ目は聖王様からのありがたいお言葉を届けに来た。『此度は偉大なる神聖国への助力大義であった。これからも何かあった時はすぐに駆けつけるように』との事だ。」
はぁ‥
バッカじゃないのコイツら?
なんで素直に助けてくれてありがとうって言えないわけ?
こんなんだから他の国に攻め込まれるのよ!
思わず口から出そうになった言葉を飲み込んだ。
「それともう1つ。」
はぁ‥
また碌でもない事なんでしょうね‥
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます