第487話
その日の夕方。
『アウローラ』の拠点に大量の食材やら、人が集まってきた。
このたくさんの食材の半分はミミウのお腹に収まるんだろうな‥
半分で済むかな‥
「タルタル神様!」
うっ。
この声は‥
「フ、フーラさん‥お久しぶりです。」
「ああ‥なんと勿体ないお言葉。現世にいらっしゃるタルタル神様にまたお会いして、お声をかけていただけるとは‥」
あれ?
これって時間をかけた分、余計に拗らせてない?
なんか余計に酷くなってるような気がするんですけど‥?
「今日はタルタル神様の降臨祭にお呼びいただき誠にありがとうございます。タルタル神様のためにも精一杯腕を振るわせていただくつもりです。」
「うん‥よろしくお願いします‥」
「その前にタルタル神様にタルタル教の布教についてご報告させていただきます。」
え?
フーラさんがそう言うと、近くにいた神官風の服を着た人が近づいてきた。
「これはセイルズにあるタルタル教神殿から来たペイセル神官長です。以後お見知り置きを。」
は?
セイルズにタルタル教の神殿とかあるの?
そういえばセイルズに来た時に、新しい神殿が出来てるなとは思っていたけど、まさかのタルタル教神殿なの?
「この度はタルタル神様にお目にかかることができ、光栄でございます。それでは現在のタルタル教の布教状況になります。ロンギル共和国55%、エルフェノス王国20%、ウルスート神聖国3%、アルラント‥」
な、なにやってんすかフーラさん?
これは俺が目を離してしまった事が原因なんだろうか‥?
もう修正出来ないところまで走ってる気がするんだけど‥
「わ、わかりました。ご苦労様です。今日は『アウローラ』の慰労会になりますので、タルタル教の事は後日と言う事で。」
「申し訳ございません!すぐに準備に取り掛かります!」
そう言って、フーラさんと神官服を脱いだペイセルさんが調理場の方に走って行った。
これはそうだな‥
今は関わらないで、後で『ほどほどに』とか書いた手紙を送るとしよう。
俺はそう思い、その場から逃げるように遠目から見ていたアキーエたちの方に向かった。
神聖国‥
ウルスート神聖国の大神殿
その中に女神ウルスエートの代行として、神聖国の政を担う聖王と呼ばれる者がいる。
「聖王様、セイルズの傭兵団の元に向かわせた者が戻ってまいりました。」
「ほう。して何か持ち帰ったか?」
「はい。魔道具と思わしき靴を。」
「ふむ。それだけか?それでどのような効果がある?」
「それが‥」
「なんだ?言ってみよ。何か問題があったのか?」
「はっ!持ち帰った魔道具を騎士団の師団長に使わせましたが、何やら爆発して頭が燃えたそうです。」
「ははっ!使える魔道具ではなかったと言う事か?」
「いえ、それが魔道具には文字が書いてあり『光ある者が空を舞う』と。それでこの魔道具を勇者に使用させていいか、指示をいただきたく伺いました。」
「なるほどな。『光ある者』か。もしそれが光属性を意味するのであれば、探らせた者が持ち帰れたのもわかりはするな。」
「と言われますと?」
「傭兵団に勇者などおるはずがあるまい。ならばその魔道具は使う者がいなかったので放置されていたのだろう。もしその魔道具を勇者が使えるようであれば、勇者たちをセイルズに向かわせろ。そして其奴らが持っている魔道具を全て徴収させよ。理由はそうだな‥勇者のみが使える魔道具が見つかった、傭兵団で使用している魔道具に別の効果があるやも知れぬ、その為に全て回収して魔王との戦いに備えさせてもらうとでも言っておけばよかろう。」
「はっ!それと魔道具を持ち帰った者が腕を欠損しており、魔道具を持ち帰った報酬として、欠損を治せる上級ポーションをいただけないかと申しております。」
「腕を失ったか‥その程度で希少なポーションを渡せるはずがあるまい。金貨でも渡して‥いや、面倒だな‥いつも通りにしておけ。」
「はい。それではすぐにでも処理しておきます。」
聖王は報告に来た男が去ったのを見て、顔に笑みを浮かべる。
「ふははは。帝国の邪教徒どもめ。魔道具が手に入ったら1番にほろぼしてくれるわっ!」
大神殿に笑い声が響き渡った‥
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます