第485話
残り4つの反応は、落とし穴からどうにか抜け出して、先に進むようだ。
穴から出られるように、梯子をつけててよかった。
次に用意したのは、上から落ちてくる天井だ。
これは威嚇用で、屈めば当たらないようにしている。
1人が床のスイッチを踏んだようだ。
危ないぞ、屈むんだ!
そんな俺の気遣いはどこにやら‥
1人が反応できず、上から落ちてくる石の天井をまともに頭に受けた。
反応がまた1つ消えた‥
た、多少の反応はせんかい‥
ちょ、ちょっと本気でまずいかもしれない。
こいつらに警戒心というものはあるのか?
神聖国の人たちはお馬鹿さんばっかりなのか?
かなり優しめの罠にして、蜘蛛型モンスターの木偶人形に虐めてもらおうと思ってたのに、このままいくとその前に全滅しそうだ。
ちょっと予定より早いけど、蜘蛛型人形に出撃してもらおう。
俺は『転移』で蜘蛛型人形の部屋に移動する。
そして蜘蛛型人形を起動させて、元の場所に戻る。
少しは進んでたかと思ったら、辺りを警戒してた。
今更かい!
そして奥の通路からカサカサと迫ってくる音が聞こえてきた。
さて蜘蛛型人形のお出ましだ!
さあどうする侵入者たち‥‥‥よ?
「何か音がするぞ!」
「モ、モンスターじゃないのか?どうなってるんだここはっ!」
「も、もう無理だ!このままでは全滅してしまうぞっ!」
いや‥なにやらこっちが引くくらい恐慌状態に陥ってますけど‥
君たち自分たちから忍び込んだんだから、仕掛けがあるくらい思ってたんじゃないの?
蜘蛛型人形が彼らの前に現れた。
「うわぁ!やっぱりモンスターだ!」
やっぱりと思ってるなら、せめて戦う準備でもしませんか?
「ちっ!ここは俺がひきつける。その間に撤退して安全地帯を探すんだ。ここのモンスターは強さもわからん。やはり無理に入るべきではなかったのだ‥」
男の言葉に他の男たちは少し冷静さを取り戻し、蜘蛛型人形を警戒しながら安全地帯を探そうとする。
「一度この遺跡から撤退して、体制を整えるぞ。場所は確認できた。あとは慎重に事を進めて判断するぞ。」
おお!
普通の人がいる。
でもね。
蜘蛛型人形の脚が男を襲う。
突然の事で男は反応できない。
肉を貫く音がして、蜘蛛型人形の脚が男の胸を貫き、背中まで貫通した。
「ぐぼぁ!」
男は蜘蛛型人形の脚に掴まっていたが、やがて力なく手を離し、そのまま地面に倒れた。
悪いが、慎重派の奴はいらないんだ。
ここ場所の恐怖を、絶望感を感じて神聖国に逃げ帰って報告してもらわないといけないから。
ダンジョンを荒らすんじゃなくて、勇者を使って魔道具を徴収しに来てもらわないといけないんだからさ。
「う、うわぁ!」
「ひぃ!だ、ダメだ!もう死ぬしかないんだ!」
こっちの方が都合がいいのはいいのだが、さすがにその慌て方はどうかと思うぞ。
散り散りに逃げ出す侵入者たち。
蜘蛛型人形を使って、そのうちの1人の進路を誘導する。
男は小部屋に逃げ込む。
男が部屋の中を見渡すと、幾つかの魔道具が転がっていた。
「う、うひぃ!」
男は幾つかの道具を懐に入れると部屋から出て、周りを窺う。
このまま帰してもいいんだけど、それだと別の侵入者が来そうなんだよね。
男は思い切って部屋を飛び出したが、そこに蜘蛛型人形が現れる。
「ひぁっ!」
蜘蛛型人形は脚を振るい、男の片腕を跳ね飛ばした。
腕は男の身体から離れて後ろの壁にぶつかり、潰れた後に地面に落ちた。
「あ、あ、あが‥」
男はそのまま持っていた魔道具を落として、地面に突っ伏した。
俺は近寄って確認する。
ショック死したかと思ったが、まだ息はあるようだな。
気絶しただけみたいだ。
俺は男の傷口にポーションをかけて、止血する。
そして蜘蛛型人形に男を地上まで運んでもらった。
ダンジョンの入り口に男を放り出すと、体力回復のポーションと、靴型の魔道具を男の側に置いておく。
これで命からがら自分で逃げ出したって思うかな?
後は片手になっちゃったけど、お土産持って頑張って神聖国までお帰りくださいな。
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