第477話

神聖国が勇者を各国に向かわせる理由。


それは各国のアーティファクトを回収するためだった。


神聖国は今回、帝国に侵攻されて自分たちの国がどれほど脆いかを知っただろう。


今後どうするか?


自国を守るために、敵を攻撃できるようなアーティファクトが喉から手が出るほど欲しいはず。


そのアーティファクトが、国ではなくただの傭兵団が保有しているとしたら?


あの国の事だ。

国相手に交渉するよりも簡単だと思ったりするんじゃないだろうか?


しかしその傭兵団は出す事を渋ったら‥


魔王を倒すと言う大義名分で勇者を『アウローラ』の元に向かわせるような気がする。


俺は思いついた事をアキーエ、キリーエと相談する。


「なるほどね。確かにあれだけ派手に戦ったんだし、神聖国から接触もあったくらいだから、まずもらいにくるでしょうね。」


やっぱりそうだよな。

だとしたらセイルズで待ってる方が無難だよな。

そしたら勇者と話す時間も取れるだろうし、出国してくれるのであれば、わざわざ危険を冒して神聖国で攫う必要もなくなるしな。


「キリーエはどう思う?」


「そうやね。それでいいと思うけど‥でも神聖国やったら国相手じゃなかったら無理矢理持っていきそうな気がするんやけど?」


「無理矢理?」


「奪うのは、この間の戦いみてるんやったら無理と思うかもしれんけど、盗むんやったらいけるとか思うんやない?もし見つかっても魔王討伐のために徴収しに来たとかいいそうやん。」


それは困るな。

う〜ん。

秘密基地は普通には見えないようにしてはいるけど、探そうと思ったら見つかるもんな。


それに特に防犯なんかもつけてない。


盗まれると勇者が来なくなりそうだから、とりあえず秘密基地の防犯を先に考えるかな。


「それじゃ、ちょっとセイルズに戻って秘密基地の改造してくる。」


「もう。今回は急ぐって言っても時間はあるんでしょ。せっかくだからみんなで行きましょう。」


「いいのか?またセイルズに戻ることになるけど?」


「そんなの今更でしょ。それに魔道具の反省会するなら、セイルズの方がいいんじゃない?『アウローラ』の人たちの拠点でした方がいいでしょうし、何よりアレカンドロの家もあるんだから。」


それはそうだな。

それに今神聖国が来ても秘密基地には何も残ってない。

昇降機代わりのゴーレムがあるくらいか。



「それじゃあみんなでセイルズに戻るか!」


「お?それじゃあマルコイさん。宴会はセイルズに戻ってからになるのか?そしたらよ、フーラさんも呼んでいいか?チキン南蛮も腹一杯食べたいしよ!」


おう!

フーラさんの事忘れてたよ。

ウルスエート教よりもタルタル教の方が俺としては問題だった。


メンセンめ。

フーラさんに会いたいだけで、チキン南蛮はおまけのくせに‥


「チキン南蛮ですか!ミミウも食べたいですぅ!」


くそ。

早くもミミウが反応してしまった‥


仕方ない。

俺も関係者として今のタルタル教がどうなっているのか確認する必要があるのかもしれない。


いや、それでも俺は関係者ではないと言いたい!


俺の方にポンと手を置くアキーエ。


「マルコイ。諦めも肝心よ。」


くっ!

俺の心の葛藤まで読まれるとは‥


「わかったよ。ただ忙しそうだったら無理強いはするなよ。」


「何を言ってるんだよマルコイさん。マルコイさんに呼ばれる以上に大事な事なんて、フーラさんにあるわけないだろ?」


やめろ。

あまり俺の精神をゴリゴリ削るな。


「それじゃあ一旦セイルズに移動するか。」


「「「はーい。」」」




「なあアキーエ。私もセイルズについて行っていいのかな?」


「もちろんじゃない!リルはこれから幸せにならないといけないんだから。いい人が見つかるまで一緒にいたらいいわよ。」


「そっか。ありがとうアキーエ。」



それじゃあ新しい仲間とセイルズに行きますかね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る