第476話

ライリーの怒りが収まったからスキャンから話を聞くとしよう。


「いや、まだ終わってないぞ!俺がどれだけ恥ずかしい思いをしたのかわかってるのか、まったく‥」


どんまい。


ライリーはアースンで宿をとり、スキャンの前で魔道具を解除したそうだ。

まあ、おっさん1人だったからいいじゃないか‥


そう思っていたら、ライリーに睨まれた。


そして今回も着装しているから、解除すると裸になる。


ライリーには今度洋服をプレゼントしておこう。

お金はないけど、【スードウクリエイター】で作れるからね!


その前に魔法少女の改造が先かな。

でも脱げた服を再生する事なんて出来ないし、何か思いついたらでいいか。


相変わらず睨んでいるライリーは置いておいて、今は帝国の話だ。


「ところでスキャン。帝国兵は本当に撤退したんだな?」


「ああ。何があったのかわからないが、神聖国から送ってきた手紙には、帝国兵は神聖国の目前まで来ていたんだが、突然撤退したらしい。」


スキャンにはスキル【アポーツ】があるからな。

信頼できる情報だろう。


「あと神聖国はなぜここまで簡単に追い詰められたんだ?」


「そうだな‥いろいろ理由はあるよ。神聖国の騎士団が格好ばかりで、ほとんど戦闘経験のない者ばかりだったとか、敵に恐ろしい程強いヤツがいたとかな。」


「神聖国の騎士団はそこまで弱かったのか?」


「ああ。元々神聖国は女神を信仰している国だならな。他国も女神の怒りを買いたくなかったんだろ。まあ実際は神聖国のヤツらの方が、よっぽどあくどい事やってるんだけどな。でもそのせいで、実践経験があるのは獣神国と揉めている部隊くらいだったみたいなんだよ。だから、自国の騎士団の3分の2は役立たずの兵だったわけだ。」


「でもその3分の1がいれば少しは戦えたんじゃないのか?」


「その実践経験がある部隊が戦ったのが、帝国兵にいた仮面を被った恐ろしい程強い女だったんだ。」


なるほど。


実践経験のない騎士団なんて、冒険者ランクEくらいだろう。

ゴブリン相手なら何とかなるけど、戦闘経験のある兵士相手だと何もできやしない。


それに主として戦うべき部隊が戦ったのがリルならSランク相当の実力がないと無理だ。


俺もめっちゃ斬られたし‥


「それで神聖国のとっておきだった勇者を投入したんだけど、仮面の女とは優勢に戦えてたみたいだけど、相手がエルフの男になってからは勇者達が劣勢になったみたいで。最終的に勇者パーティの1人が深傷を負って撤退したらしいよ。」


なるほど。

相手がエルフなら単純に実力勝負になるだろうからな。


しかしそのエルフがリルみたいに洗脳されてるのか、それとも自分から参加してるのか‥


それに帝国は完全に魔王の傘下になってるのか‥?



わからない事が多いな‥


しかしエルフの件も気になるが‥


「スキャン。勇者の事は何かわかるか?」


「勇者は負傷して神聖国で治療中って事くらいしかわからないんだ。」


「誰が負傷したってのは?」


「今のところ誰かまではわからない。もう少し待ってくれたら、そこまで調べるけど?」


「いや大丈夫だ。ありがとう。」


もう誰が負傷したとか関係ないかな。


ここまで関わってしまったんだ。

勇者御一行まるっと攫いに行きましょうかね。


「どうするのマルコイ?すぐにでも連れ出しに行く?」


「そうだな。心配ではあるけど、ただ攫ってきても問題になるよな?バレなきゃいいんだろうけど、誰かに見られたりしたらお尋ね者になるよな?」


「そうね‥勇者御一行が自分からこっちに出てきてくれたらいいんでしょうけど。」


自分からこっちにか‥

何か神聖国が勇者を向かわせるような物でもあればいいんだけど‥


ライリーがいるってわかれば、正人は飛んできそうな気がするんだけどなぁ‥


俺は魔法少女になったはいいが、着替える事が出来ずに戦闘服を着たままのライリーを見る。


あっ!!


そうか!

もう俺って種撒いてるっぽくない?

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