第471話

帝国兵を夜襲する事3日。


帝国兵は見た目でもわかるくらい疲弊している。


う〜ん‥


思ったよりも成果を上げているような気がする。


これってこのまま自分たちの国に帰ってくれたりしないかな?


でもあと何日かしたら神聖国だからな‥


さすがにこのまま帰ったりはしないか。



さてさて今日も今日とて木偶人形。


俺は『スペース』から木偶人形を出す。

もちろん空飛ぶ人形も。


『スペース』から出た木偶人形たちは帝国兵の元に向かう。


「うわっ!なんでこっちに出やがるんだ!」


「ひぃ!もう勘弁してくれ!」


今日は4日目。

最初の3日は四隅から順に木偶人形に襲わせた。


4日目は残った箇所から出てくると思って食糧庫も最も離れた所に保管しているだろう。


だからあえてその対角線に位置する場所から木偶人形を出してみた。


我ながら性格が悪いなと思うけど、少しでも帝国兵の足を遅くしたい。


今日も3時間程度夜襲する事になるだろう。


しかし数日行ってきたけど、神聖国との距離が縮まったしこの辺で終了するべきかな。


俺は火の手が上がる野営地を見ながら、つぎの動きをぼんやりと考えていると、スキル【察知】に反応がある。


怖くて逃げ出した人だろうか?


それにしてはまっすぐこっちに向かってくるぞ。


俺は草葉の陰に隠れる。


向かってきた人の姿が見えてくる。


どうやら女性のようだ。


女性は此方に辿り着くと、通り抜ける事なくその場を探し出した。


やはり避難者じゃないのか?


女性は人が隠れていそうな草葉を、かき分けながら探している。


ふむ。

このままだと見つかりそうだな。


俺はこっそりとその場を離れる為に移動する。


「あ〜、ほらね。やっぱり隠れてたぁ!」


見つかったか‥

やっぱり誰かがいると思って探してたのか‥

厄介だな。

転移で逃げるか‥


「お前が犯人だなぁ!よーし、お前みたいな奴は、このリルちゃんが倒してやるぞー!」


は?


今あいつ何て言った?


リルちゃんが倒してやるぞ?


リル‥だと?


思わず俺は女の顔を確認する。


あちゃー。


やっぱりリル 


ロンギル共和国で俺を暗殺しにきた後、洗脳を解除して国に戻ったと思ってたんだけど‥


もしかして途中で捕まってしまったのか?

そしてまた洗脳されたと。

全くどこまで鈍臭い奴だよ‥


「いっくぞー!『斬:風狼』」


リルが離れた場所から刀を振るう。


これって確か遠距離から斬撃を飛ばす技だったよな!


俺は周りの木々を薙ぎ倒しながら飛んでくる斬撃をしゃがんで躱す。


「あれ?躱された?なんで?リルの攻撃知ってたの?」


「おい!リル!俺だマルコイだ!ロンギルで会っただろう!」


「マルコイ〜?そんな人しらないです!さては私を油断させようとしてますね!そんな手には乗らないですよ!」


知らないか。

それに話し方がさらに幼くなっているような気がする。


かなり強い洗脳をかけられたと思っていいだろうな。


「う〜ん!なら全力で行きますよ!『精神統一』!」


リルから青白い光のような物が立ち登る。


何かやばそうな気がする。


「いっくぞー!」


リルが猛スピードで此方に突っ込んできた。


まずい!

俺は転がりながら横に避ける。


「あー!何で躱すの?でも逃がさないもんね!」


リルは再度此方に向かってくる。


こいつと接近戦はヤバい。

距離をとって戦わなくては。


そう言えば‥


俺は『スペース』から飛ぶ人形を取り出す。


こいつは怖い物が苦手だったよな。


「ひぃっ!リ、リルはそんなものには負けないんだから!」


そう言って此方に向かってくるリル。


残念だが、これはフリだぞ。


リルは上段から袈裟斬りで斬りつけてくる。


それを何とか横に転がって躱す。


すると俺が移動した事で、俺の後ろに浮かんでいた奴が、リルの視界に入る。


「ぎゃあ!」


どうだ!

新作の首だけリアル人形は!

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