第467話
モンスター側にいる点はここから離れて行った。
こっちに近づいてくるのは、あまり好ましくない相手だな。
おそらく神聖国側の人間だろう。
俺たちパーティは少し離れた所で様子を見る事にした。
すると馬に乗った真っ白な鎧を来た男がやってきた。
「おい!ここの代表者は誰だ!」
おいおい。
第一声がそれかよ。
別にお前たちにお礼を言って欲しくてモンスターを倒した訳じゃないんだけど、さすがにムッとくるな。
「俺が代表だ。」
クワイスはそう言うと一歩前にでる。
「所属と名前を述べよ!」
「傭兵団『アウローラ』の団長クワイスだ。」
「ほう!傭兵団か!遠方から見せてもらったが、お前たちの活躍大変見事だった!聖王様にご報告すれば栄誉ある称号を聖王様より授かることだろう。光栄に思うがいい。それとお前たちが使用している物は聖王様に献上させてもらう。速やかに渡すがいい。」
なんだそれは?
こいつ自分が何を言っているのかわかっているのか?
末端までアホなのか?
「なるほど。だが全てお断りさせてもらう。俺たちは依頼があってここでモンスターを倒しただけだ。聖王とやらに褒めてもらう必要はない。あと飯の種である道具を渡すはずがないだろう。お断りする。」
うわー!
クワイスさんカッコいい!
「なんだと貴様!不敬だぞ!」
「不敬も何も、それはあんたが勝手に独断で言っているだけだろ?聖王様のありがたいお言葉だったりするならちゃんと考えてお断りするが、なぜ突然やってきたあんたの言う事を聞かないといけないんだ?悪いが依頼も達成したから俺達は帰らせてもらうよ。」
「な、な、な、なんだと貴様っ!」
男は怒りでぷるぷるしてる。
しかしクワイスも煽ってるなぁ。
クワイスも男の言い分に頭にきてるんだろうな。
しかしこれだけの戦果をだした相手に対してここまで高圧的な態度で来るなんて、何を考えているのやら‥
少しは感謝して協力を要請でもすれば結果は違ったかもしれないのにな。
まあそれでもクワイスは神聖国に関わりたくないと思ってるからお断りするとは思うけど。
こんな態度だから関わりたくないと思ってるんだから、しょうがないか。
男は顔を真っ赤にしながら周りを見渡している。
すると俺の顔を見てその動きが止まる。
「!?ま、まさか‥」
男の顔は先ほどまでと違って怒りではなく、驚きの表情をしている。
え?
俺何かしたっけ?
「貴方はこの傭兵団の人でしょうか?その黒髪に黒眼‥勇者に関連するスキルをお待ちではありませんか?」
黒髪、黒眼?
何を言ってるんだこいつは?
俺は銀髪‥
あっ!
そうだった。
今は魔道具で色を変えてるんだった。
まさかそんな捉え方をするとは思わなかった。
しかし黒髪はそこまで珍しい色ではないはずだぞ?
「いや違う。俺はただの一兵だ。そんなスキルなんて持っていない。」
「なるほど。承知した。我が神聖国に現れた勇者様方が全て黒髪黒眼だったものでな。これ程の強さを持った部隊だったから勇者様の加護があったのかと思っただけだ。」
あちゃー。
やっちまったかな。
目立たないようにしてたけど、余計に変な誤解を与えてしまった気がする。
「まあいい。この傭兵団の事は聖王様に伝えさせてもらう。」
男はそう言うと、踵を返し聖都の方に向かって馬を走らせた。
う〜ん。
実験は楽しかったのに、最後に水をさされた形になってしまった。
めちゃくちゃめんどくさいな神聖国‥
さっきの人が偉いのかどうかしらないけど、全員があんな感じなのか?
これで終わってくれるといいけど、何かしらちょっかい出してくるかな‥
まあ考えても仕方ない。
今回の魔道具実験は大成功って事で凱旋することにしましょう。
「それじゃあ依頼達成だ!街に戻るぞ!」
クワイスの合図で傭兵団は帰路についた。
そしてクワイス達と共にアースンに戻った時に、帝国が神聖国の騎士団を打ち破り、聖都に進軍しているとの情報が入ってきた‥
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