第466話

その男は自分が見ているものが信じられなかった。




男は上からの命令に従って動いていた。


元々スキル【マニュピレイト】を持っていた事から、男はモンスターを1箇所に集め、それを合図があると同時に人が治める国である神聖国を襲わせるよう承っていた。


古びた遺跡を見つけて、モンスターを集める場所を確保し、そこに徐々にモンスターを集めていった。


かなり前から指示があっていたので、かなりの数を集める事ができた。


どうやら上は帝国と手を結んでいるのか、帝国が神聖国を攻めるのに合わせろとの事で、その合図を待っていた。


魔王様が帝国などと言う人族の国と手を結んでいるのは気に食わないが、魔王様の命令は絶対だ。


どうやら帝国側から接触があったようだが、神聖国を滅ぼした後に帝国も滅ぼすのだろうか?


まあその後の事など自分が気にする必要はない。

自分は与えられた仕事を完遂するまでだ。


帝国側から狼煙が上がった。


おそらく今日神聖国を攻めるのだろう。


モンスターを遺跡に集める際に、神聖国側に見られてはいるので、氾濫の予測はしているのかもしれない。


だがまさかそれが帝国と同時とは思っていまい。


それにモンスターが氾濫したとしても近くの街を襲うと思っているだろう。


ひひ。


人族どもが慌てふためいて、蹂躙される様を見る事ができるのであれば、この仕事もやり甲斐があるというものだ。



遺跡の中にいるモンスターに指示を出す。


まずは移動速度が速いモンスターからになってしまうが、それで構わないだろう。


足の速いモンスターに襲われている最中に、更に大型のモンスターが現れる。

その時人族がどんな顔をするのか‥

考えただけで顔が緩んでしまう。


モンスターは遺跡から出て、脇目も振らずに神聖国の聖都とやらを目指す。


しばらく進むと、人族が見えて来た。


まさか氾濫が予測されていた?


いやそれはないだろう。

だとしたら待機してる人族が少なすぎる。

100人満たない程度だろうか?


だが逃げる様子は見当たらない。

まさかこの程度の人数でこの数のモンスターを止めようというのか?


笑いが出る。



モンスターは目の前に獲物を見つけて勢いづく。



そして‥



突然モンスター達が進んでいる地面が爆発した‥






大きな音ともに砂塵が舞う。



何が起こったのか?



人族が魔法を使ったのか?



かなり大きな魔法だったが、あれ程の威力だ。

連続で使用する事はできない‥



その時、またしてもモンスター達の地面が爆発する。


しかも今度は連続で爆発している。


オーガの腕が飛んだ。


オークの首が地面に転がった。



人族め!


かなりの数の魔法使いを用意していたのか!


しかしまだまだモンスター達はいる。


死骸を乗り越えて、お前達に牙が届くぞ!




そう思っていると、今度は後方にいる人族が飛び上がった。


人族が飛ぶ?


ありえない‥


魔族でも風を扱う魔法使いが飛ぶ事はできるが、飛ぶと言うよりも浮かんで落ちるといった動きだ。


あんな風に水平に飛ぶ事なんてできるはずがない!


俺はいったい何を見せられているのだ?



そのまま人族はモンスターの群れに何かを落としていく。


するとモンスターの中で先程の爆発よりも更に大きな爆発が無数に起こる。



そ、そんな‥


何とか爆発を免れた大型のモンスター達が到着する。


そのモンスターに向かって槍のようなものが着弾する。


更に爆発が起こる。



もうやめてくれ!



魔王様に命令された事が遂行できなくなってしまう!



俺が直接行って爆発させているやつを殺すか?


いや、爆発が終わった後に出てきた奴らも軽々とモンスターを倒している。


人が乗っているゴーレムに異様な力で棒を振り回しているフルアーマーの男など、俺が行ってどうにかできるものではない!



そしてその真っ赤な瞳が見つめる前で、奥の手だったサイクロプスがまとめて潰されたのを見て男はその場を後にした。


「ま、魔王様に報告しなければっ!」


そう呟いて‥

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