第463話
ウルスート神聖国。
その国は女神ウルスエートを唯一神と崇め、その教えを国教として定めている。その教義を統治の根本原則とし、国家行事として儀礼を執行する国である。
国を治めるのは王族ではなく、女神ウルスエートとしており、神の代行者として選ばれたものが聖王として神の代わりに国を統治している。
神聖国の中心にある聖都ウルスには大神殿があり、そこでは国を中枢を担う者たちが話し合いをおこなっていた。
煌びやかな贅をつくした部屋の中で、聖王ルートヴィヒは自分の前で話をしている者たちを黙って見つめていた。
その場にいる者たちの中で誰よりも豪華な服を着ている聖王ルードヴィヒは、頬杖をついたまま目の前にある皿から果物をとって口に含む。
テーブルには質素を教義にしている神聖国の民では、とても口にする事が出来ないような物が所狭しと並んでいる。
「次の罪科ですが、国内に邪教が入り込みつつあるようです。」
「邪教?この神聖国に何故そのようなものが入り込むのだ!?」
「この世界の神は女神ウルスエート様だけだ。他に神はおるまい。一体どのような邪教だと言うのだ?」
「はい。名称はタルタル教です。なんでも絶対神タルタルを崇めているとか。」
「はっ!そのような聞いた事ない邪教なんぞ、根絶やしにしてしまえばよい。」
「それが他の国の新興宗教のようで、国内の邪教徒の数が正確にはわからない状況です。また規模もわからないため、慎重に調査しております。」
「何を生ぬるいことを!怪しいやつを片っ端から捕らえればよかよう!」
聖王は考える。
此奴らは一体何を言っているのか‥?
今神聖国は大きな問題を抱えている。
この国は勇者を召喚して、それを国内外に通達した。
勇者を女神から授かったのは、神聖国だと。
勇者はこの世界で生まれ、ある日突然勇者となる。
魔王と同じで唯一無二のスキルだからだ。
しかし実際は違う。
勇者は違う世界から呼び寄せるのだ。
正確にはこの世界の上位に当たる世界に穴を空けて、そこからこの世界に落とすのだ。
それがどのような意味かはわかっていない。
この神聖国に聖王にだけ伝わる聖書に書かれてあるのだ。
ただ聖書には勇者の召喚法が書いてあるだけで、もちろん勇者を元の世界返す方法など載っていない。
勇者は利用して国力を上げたら処分してよいと思っていた。
しかし予想外の事が起こった。
勇者を召喚したために魔王が現れたのだ。
魔王が現れた時、勇者も世界に現れる。
まさか逆も同じ事が起こるとは思わなかった。
まあ魔王が現れた為に、他の国のアーティファクトを集めやすくなったのは僥倖であったが。
あの忌々しい獣人国でさえ、自国のアーティファクトを渡してきたのだから。
だがまたしても問題が起こった。
帝国がアーティファクトを渡す事を拒んだのだ。
その上偉大なる我が国に対して侵攻してきたのだ。
我が国を、地位を、存在を脅かす者は根絶せねばならない。
すぐに勇者を呼び戻し、帝国に対する作戦を練るはずだった。
しかし‥
何故、此奴らはこんなどうでもいい話をしているのだ?
「いやいや、邪教と決めつけるのはどうかと思いますぞ。まずはしっかりとその宗教が神聖国の教義に反しているか調べる必要がありますまいか?」
そう脂ぎった大司教が言い返したところで聖王は声をかける。
「貴公ら‥帝国の問題はなんとする?」
「はっ!帝国どもですな。今此方に向かっているという情報でしたが、勇者達と騎士団を向かわせております、女神ウルスエートの加護がありますゆえ帝国などあっという間に殲滅いたしましょう!」
その帝国に国の一部を切り取られた事をわかっているのか?
一度全ての司祭をすげ替える必要があるのかもしれんな。
此奴らの方が金の作り方はうまかったのだが‥
「ふん。ならばモンスターはどうなっておる?」
「はっ!あやつらは所詮魔物。聖なる神聖国には手出し出来ますまい。」
やはり馬鹿どもか‥
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