第457話

「それでは失礼して試させてもらいますね。」


スネタさんはそう言って2本の鎚をそれぞれの手に軽々と持つ。


ミスリル製とはいえ、かなりの重さのはずなんだけど‥


「えっとまずは、柄に魔力を流して‥」


大鎚を持ったスネタさんが、鎚に魔力を流し始める。


すると魔力回路が反応して、魔力を流す道を作り出す。


そして木ごろしと呼ばれる部位に魔力が流れていく。


するとすぐに限界を迎えたのか、鎚が小さく震え出す。


スネタさんも気づいたのか、大鎚を近場の大きな岩に振りかぶる。


あれ?

爆発させるから、木ごろしの方を叩きつけるんだけど‥

それだと逆になって‥


あっ!

説明するの忘れてた!


「ちょっ!」


俺は慌てて止めようとするが、間に合わずスネタさんはそのまま岩に鎚を叩きつけようとした。


すると叩きつける寸前に魔力の暴発が起こり、木ごろしの所から大きな爆発が起こる!


そのままスネタさんは大きな岩に大鎚を叩きつける!


爆発音のすぐ後に、高い金属音がしたと思ったら‥




地面が揺れた。




一瞬の揺れではあったが、身体が数センチ浮き上がるような揺れだった。



岩を叩いた衝撃のためか、砂埃が舞っていてスネタさんの姿が確認できない‥


少し時間が経つと砂埃が収まってきた。


砂埃の中には岩に大鎚を叩きつけたままの姿のスネタさんがいた。


大鎚で叩きつけられた岩は真っ二つというか、大鎚が通った箇所が削り取られているかのようになっている。


そして勢い余ったのか、地面に叩きつけられている大鎚の周りが、大きく地面ごとへこんでいる。


「マ、マルコイさん‥流石にこれは凄すぎますね‥」


スネタさんの手が小刻みに震えているように見える。


「大鎚が持って行かれないように、抑えるのが大変でした。でもこれだけの威力があれば、大抵のモンスターは一撃で倒せるでしょうね。」


えっと‥

そっちで攻撃しないで、爆発する箇所をモンスターに当てて、爆発させるっていう方法だった気が‥


「これは爆発で起きた推進力を使って、大鎚の攻撃を高める魔道具になります。ただ連続で使用する事は出来ないので、一度使うと数時間は使用できなくなると思います。正確に言うと使えはするけど、魔力を溜めている時間が短いほど威力が落ちると思って下さい。」


実験はね‥

結果がすべてなんだよ。


爆発で攻撃の威力が上がった?

大いに結構。


より良い使い方があれば、そちらに移行するべきだ。


「なるほど。ところでマルコイさん、何か言いかけてらっしゃいませんでした?」


「ん?何の事ですか?あっ、そうですね。威力が高いので気をつけて下さいって言おうと思っただけですよ。」


ふぅ。

なんとか誤魔化せた。


魔力を込めたら、いつ爆発するかわからないから、モンスターを木ごろしの方で攻撃して、爆発したら当たり!みたいな気持ちで作ったんですけど‥


まあスネタさんも顔を紅潮させて喜んでいるので、結果としてはよかったと言う事で‥



とりあえずスネタさんもミスリルの大鎚に頬擦りしてるので、この魔道具についても成功って事でいいのかな。


あとは他の魔道具と一緒だけど、実戦で使ってもらってどうなるかってところだ。





さて、あと魔道具を渡すのはライリーか。


俺はライリーに魔道具を渡すために、ライリーを探す。


すると遠くから此方に向かって駆けてくる人が見えた。


その人が近づくにつれて俺の顔に笑みが浮かぶ。


その人は『アウローラ』が待機している所に着き、クワイスに声をかける。


「クワイスさん。今日明日にでも神聖国と帝国は衝突しそうです。それと街で情報を集めましたが、やはりモンスターの目撃情報が増加しています。やはり同時期くらいに何処かで氾濫が起こりそうですね。ただモンスターは様々な場所で目撃されているので、どこで氾濫が起こりそうなのか正確にはわかっていないようです。」


「わかった。ありがとうなラケッツ。」



ラケッツさん発見!

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