第456話
『アウローラ』と『ガルベスト』には魔道具を渡したので、後はスネタさんと、ライリーだな。
本当はもう1人渡したい人がいるんだけど、今回は遠征に来てなかったみたいだし‥
「スネタさん。スネタさんの魔道具も渡しておきますね。」
「まあまあ。ありがとうございますマルコイさん。」
俺は『スペース』からスネタさん用の魔道具を取り出す。
スネタさんの魔道具については、スネタさんの戦闘の様子などを見ていないから、スネタさんとエルエス兄さんからの情報で作る事になった。
でも二つ名が『悪鬼の双槌』だから、もちろんスネタさんに渡すのは、ミスリルで出来た2本の大槌だ。
まあミスリルで出来ているから大鎚ってところだな。
ちなみに柄の部分はスキル【スードウクリエイター】で装飾している。
二つ名に悪鬼なんてついてるので、柄の先には鬼の小さなぬいぐるみをつけてみた。
「あらあら可愛い。」
うむ。
好評のようだ。
このスネタさん用の魔道具だが、一見何の変哲もないミスリルの大鎚だが、これには新しい爆発を搭載している。
形状としては頭部に左右に広がった円柱形のミスリルがあり、物を叩いたり潰したりお馴染みの鎚の形をしている。
違うのは片方の円柱形の部分が、もう片方よりも大きく中が空洞になっている事だ。
エルエス兄さんに渡した同じミスリルで出来た槍についてはアキーエの魔法を魔石に込めて、それを爆発させている。
これはエルエス兄さんのスキル【二重化】があって初めて何度も使える爆弾と化す。
しかし【二重化】ではなく、スキル【硬質化】というスネタさんのスキルではアキーエの魔力を込めた魔石の爆発だと、使用したらその都度魔法を込めた魔石を取り替える必要がある。
それに恐らくミスリルで出来ているとはいえ、大鎚も爆発の衝撃で変形している可能性がある。
これを解消して、何度も使える爆発ハンマーにするために片方の円柱形に魔力回路を設置した。
この爆発は実はアキーエに教えてもらった、魔力は溜めすぎたら爆発する性質を利用している。
いわゆる魔力の暴発だ。
円柱形の穴の部分に他の魔道具と同じように空気中から魔力を集めていく。
通常の魔力回路で作った魔力を溜める回路、魔力タンクと言ったらいいだろうか?
それには過剰に魔力はたまらないようになっている。
魔力が魔力タンクの容量を超えた場合、余剰分についてはタンクに入らずに溢れ出ていく。
水がコップから溢れるような物だな。
そして必要時にコップに漏れないように蓋をして、その中にありったけの水を注ぎ込んでコップを割ってしまおうと言う事だ。
今回の魔力回路ついても今までと同じように魔力タンクいっぱいまで魔力を自動で集めていく。
そして柄の部分の装飾に魔力回路を取り付けているので、そこに魔力を流すと溜まった魔力に蓋をする様に膜が出来て内側に魔力を流し続ける。
それが一定量越えたら爆発する‥だろうって試みだ。
これはもちろんいつもの様に危ないから自分では試していない。
一応爆発に指向性を持たせるために、魔力を溜める側を空洞で作っている。
だって普通に爆発するだけだと、使用者も巻き込まれそうだからな。
でもこの魔道具、もし成功して爆発したら、次に使用するのに再度魔力を溜めないといけないので、数時間は時間を必要とするんだよね。
魔力回路に流す魔力を多くしたら魔力を溜める時間が短くなるんだろうけど、爆発の威力を高める為に人の魔力だけでは到底溜まらない量の魔力が必要になるから確実に魔力切れになる。
あと普通の人が使うと、いくらミスリルとはいえ爆発で鎚は変形すると思われる。
そこで必要になるのが、スネタさんの持つスキル【硬質化】になる。
これを爆発時に使えば、衝撃が大きくても【硬質化】により鎚を保護してくれるってわけだ。
俺はスネタさんに使用方法を説明する。
「ありがとうございます、マルコイさん。ちょっと試しに使ってみますね。」
「よろしくお願いします。」
俺はそう言って、爆発に巻き込まれない様にそっと距離をとった‥
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