第443話

「ちょっとちょっと!今聞き捨てならない事を言わなかった!?作った?はあ?」


むう。

うるさい奴だ。


しかし勇者たちには、そのうち俺が作った魔道具を渡そうとは思ってたしな。

いずれ話す予定ではあったから別にいいか。


「そうだ。俺がスキルを使って作った魔道具だ。知り合いからスキル【魔道具士】を模倣する事が出来たからな。」


「ちょっと何よそれ!神様不公平なんですけど〜!なんか1人チートてんこ盛りの人がいるんですけど〜!それに魔道具なんて、そんなにホイホイ出来るもんなの?」


やはり無駄に勘が鋭い。


「俺のスキルは少し特殊なんだよ。文句言うなら渡さないぞ。」


「いや〜ん。文句なんて言ってません〜。現状の不満を神様に向かって呟いただけです〜。」


なんかムカつく‥


「まあいい。それを何か理由をつけて仲間に嵌めてみろ。それで赤く光ったら‥長時間嵌めるように伝えて、後は近寄るな。洗脳された奴は何をするかわからないからな。俺が見た奴は人を殺すことに抵抗が無くなっていた。洗脳は完全に洗脳するタイプ以外にも思考誘導するタイプの洗脳もあるようだが、どちらも反応するように作っている。ただ、腕輪の洗脳解除に即効性はない。身体が異常を見つけて自身の洗浄作用といったらいいのかわからんが、元々持ってる回復力を高めて洗脳を解いていく魔道具だ。つけている魔道具の赤く光った箇所が青くなったら洗脳解除されたと思っていい。」


自分の身体の異常を治そうとする力を強化した魔道具だ。


弱い思考誘導程度なら、それほど時間はかからないがしっかりと洗脳されていると解除に時間がかかる。

それに長期間洗脳された続けて、洗脳された状態を身体が正常と判断してしまうと、この魔道具では洗脳は解除できない。


だが、最近と言っていたからな。

まだ間に合うと思いたい。


「お前たちも神聖国に戻る前に嵌めておいた方がいいぞ。」


2人とも机に置いてある腕輪を自身の腕につける。


「マルコイさん‥本当に洗脳なんてされてるんでしょうか‥?」


「はっきりとはわからん。しかし神聖国がまともな国じゃない事は確かだ。それに洗脳された奴は【賢者】だろう?正人はアホっぽいから、先に【賢者】を洗脳してしまえば、お前たちは逆らう術を無くすと思われたんじゃないか?」


「そんな‥」


俺は神聖国については限りなく黒に近い灰色だと思ってるからな。

証拠を見たわけじゃないから灰色だが、やってる事は黒に間違いない。


「お前たちも充分注意するんだな。もし危険だと思ったら獣人国に逃げてこい。俺が獣人国にいるって事もあるが、獣人国の王は話がわかる人だ。おそらくお前たちを匿ってくれるだろう。友達の心配も大事だろうが、死んだら意味がない。生きていれば心配する事も出来るし、助ける事もできるかもしれない。お前たちは勇者パーティとして召喚されたから命までは取られないと思うが、心は殺されるかもしれないぞ。」


俺がそう忠告すると、2人とも顔を見合わせて顔をこわばらせる。


「まあ神聖国が本当にお前らを元の世界に返せるのかも怪しいけどな。もしお前らが帰るのを諦めたら、神聖国にいる必要はないと思うぞ。よく考える事だな。」


俺はそう言うと、お金を机に置き椅子から立ち上がる。


「マルコイさん‥」


すると恵に呼び止められた。


「なんだ?」


「もし‥私達が元の世界に帰るのを諦めて獣人国に来たら、仲間にしてくれますか?」


う〜ん‥

仲間かぁ‥


それって俺が勇者パーティに入るって事?

それは本気で勘弁してほしい‥


「そうだな、一緒にパーティとして活動する事は難しいが、魔王を倒す為にさっきみたいに魔道具を渡したり支援する事は出来るぞ。」


「それだけでも充分です。ありがとうございます。」


「ねえねえ!そしたらもっと凄い魔道具とか貰えたりする?」


全くこいつは‥

まあ考えてやらないでもないぞ。

勇者パーティで魔道具実験とか素晴らしいからな。

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