第420話

なるほどね。

確かにアースンは港町で漁業が盛んではあるが、それだけだ。


実際俺たちもセイルズに行く時に立ち寄りはしたが、素通りしたに近い。


今回は時間があるのでゆっくりとするつもりだったけど。


キリーエが土地の購入に行った時も、領地を農地に開発にしようとしてたしな。

しかも誰も農業をする予定がないけど、土地だけ開発しようとしてる始末。


「このままじゃ駄目だと思いはしてたんですけどね。でも俺みたいな奴がいくら考えたところで、どうなるもんでもないですし。領主に期待するしかないとは思ってたんですけど、特にこれといった動きもありませんでした。だから今回のホット商会さんが作る施設で、街の人はもとより、他の街の人や国外の人も寄ってくれる街になってくれたらいいなと思ってるですよ。」


なるほどね。

この街古参の鍛冶屋さんだから、余計この街の行く末が心配だったってことか。


「だからお金なんてどうでもいいんですよ。そりゃもらえるにこした事はないんですけどね。だからこの手の作業はいくらでも持ってきてください。俺達でいくらでも仕上げますから!」


おお頼もしい。

今更実はすぐ作れるようになっちゃったんですぅ、とか絶対に言えない感じになりました‥


「ありがとうございます。それじゃあ今発注したやつと、金で同じ金型を1つ作ってください。3日後にお金を持って伺いますから。」


「へい!任せといてください、マルコイの旦那!」


よし!

これでタコ焼き器と今川焼きの金型は確保できたな。

これでホットモールの目玉となるお店も問題なく開店できるな。

あとは今川焼きはいいとしても、タコ焼きを焼くには少しだけコツがいるから、それを覚えてもらう事くらいか。


よし!

俺はほとんど何もしてないけど、形になってきたぞ!

あとは‥


金型ができるまで、木偶人形でも作りますかね‥





3日後にガッスンさんのところに金型を取りに来た。


「お!マルコイの旦那!お待ちしてましたよ!依頼の品出来上がってますぜ!もちろん金の金型も!」


「ありがとうガッスンさん。これ、ホット商会から預かってきた依頼費を持ってきました。」


あれから戻ってキリーエと相談して、キリーエが相場よりも上乗せした金額を持たせてくれた。

もちろん金の金型の分もだ。


金の金型については「それはこの街のホットモールにぴったりやね!さすがマルコイさんや!」なんて言ってくれた。

とても手違いで生まれたとは言えなかったけど‥


お金をガッスンに渡す。


「こ、こんなに?いいんですかマルコイの旦那?かなりの金額が入ってますぜ!」


え?

そうなの?

確かにたくさん入ってるなって思ったけど、相場がわからないから、これくらいが普通なんだろうなって思ったんだけど‥


「いいんじゃないですか。こっちも結構無理言って作ってもらったんですから。それとこれからもホット商会から依頼があると思うので、それを受けてもらう為の手付金と思ってもらっていいです。もちろん依頼の度にお金は払いますよ。」


「ほ、本当にありがとうございます!弟子達にも手伝わせたんで、これであいつらにも給金を払えますよ!」


たしかそんな事を言っていたな。


「こちらこそありがとうございます。ガッスンさんも一緒にホットモールを、この街を盛り上げていきましょう。」


モールに入っているお店の人たちが頑張ってくれる事が、1番の成功への近道だしな。


「はい!これからもよろしくお願いします。ところで気になる事があったんですけど、マルコイの旦那ってホット商会でどういった立場の方なんですかい?」


え?

立場?

えーっと‥

会長だけど名ばかりだし、何か特にこれといっては‥


「そ、そうですね。俺は‥は、発案係です!こう、いろいろと出来る事を考える係と言いますか‥」


「なるほど!それじゃあ今度の施設もマルコイの旦那の案が入ってる訳ですね!そんな凄い人だったわけだ!こりゃ凄い人と知り合いになれたもんだ!」


ガッスンは大きな声で笑っている。


俺‥

正確には頭の中を読まれる係です‥

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