第416話

とりあえず金属板を作るために鍛冶屋に向かう。


鍛冶屋さんにタコ焼きに使う金属板を作られせてくれ、なんて言うと真面目な職人さんだと多分怒られる。


武具を作る神聖な火でなんてものを!みたいな感じで怒られる。


しかし獣人国の自分の家で作る事ができないのであれば、どこかで鍛冶場を借りるしかない。


う〜ん‥


200個作れるタコ焼きの金属板とか、人の顔くらいのサイズの今川焼きの金属板か‥


自分で言っておきながら、そんなのを作る場所を貸してくれるような所はないような気がするぞ‥


俺は武具の商店を通り抜け、その奥にある鍛冶場が建ち並ぶ地域にやってきた。


お金いっぱい持ってくればよかったかなぁ‥

借りるためにお金を相場より高くだせば何とかなったかな‥


でも作らせて貰えなかったよ、とか言って戻ったら確実にキリーエとミミウがここに乗り込んできそうな気がする‥


なんとか交渉して作らせてもらわねば。


獣人国のサミュウさんみたいに優しい人がいるといいけどなぁ‥


一軒の鍛冶場を覗いてみる。


鍛冶場で鉄を打っている人がいた。


背が小さく筋肉質の身体だ。


もしかしてドワーフだろうか‥?

だとしたら絶対職人気質だと思うから、間違いなく貸してくれないような気がする‥


その人が鉄を打つ手をやめてこちらに振り返る。


「誰だ?」


あ、やばい。

気づかれた‥


「勝手に覗いてすみません。ちょっとご相談したい事がありまして。」


「相談?専用武具の発注か?」


「いえ、そうではなくてですね‥この鍛冶場で少し作業をさせてもらえないかと思いまして‥」


「作業だと‥?」


そのまま言葉を発さずにしばらく鉄を打っていた人は、ひと段落したのか作業を一旦やめて此方にやってきた。


暗い作業場から明るい所に出てきた人は、俺の3分の2程度の身長で異様に筋肉が発達していた。


彼は鍛治、工芸に長けたドワーフ種のようだった。


ドワーフは初めて会うわけではないし、獣人国でお酒を造る時にロバットという名の変態ドワーフと会って一緒に仕事をしている。


なのでドワーフが苦手という訳ではないのだが、ドワーフのこだわりが苦手なのである。


お酒の時もそうだったのだが、ドワーフ種は自分の好きなことや、大事にしている物に対しての執着が凄いのだ。


ドワーフとわかっていたら、声をかけずに別の鍛冶場に向かっていた。


そのくらいややこしくなりそうな種族なのである。


「すまないな、待たせて。それでうちの鍛冶場で何の作業をやりたいって言ってやがんだ?」


うわ〜、顔が厳つい。

頑固そうな顔だよ‥


「ちょっと料理を作る時に必要な器材を作らせてもらえないかなと思いまして。もちろん貸してもらえるのならお金も支払いますので。」


「はぁ?武器を作る工房で飯を作る器材を作る?面白い事言うな、お前。だがそんなふざけた理由で貸す奴がいると思うか?それに今は立て込んでるから、それじゃなくても貸す事はできんぞ。」


そうかぁ‥

残念だ。

違う鍛冶場をあたるか‥


「それに今はどこの鍛冶場も忙しいと思うぞ。急いで武具の作成をしているとこが多いからな。」


ん?

どう言う事だ?


「ちなみにどんな道具を作るつもりなんだ?今から休憩取るつもりだから、少しくらいは話を聞いてやってもいいぞ。まあ鍛冶場は貸さんがな。」


貸さんのかい。


「ん〜、そうですね。今度開設する予定の施設で使う予定の器材です。小さいのなら別の所でもできたんでしょうが、その施設の目玉にするから大きめの器材が必要なんですよ。ありがとうございます。他を当たりますね。」


「ふ〜ん‥今度開設予定の施設ね‥‥‥‥っ!?」


さて他の場所を探すとするか‥


「おい!」


俺がその場を後にして歩き出すと後ろから声をかけられた。


「おい、その新しい施設ってのはホット商会が始めたやつのことか?」


「えっ?そうですよ。ご存知でしたか。」


「いえ、ご存知も何も‥え?じゃあお前‥いや貴方が必要としてるのはホット商会で使う予定の物ですか?」

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