第411話

「今回作るお店は、その場で武具を作ったりはしないから、店舗に鍛冶場なんかは必要ない。本当に売るのが目的だ。もしかしたら武具の修理なんかを生業にする人が出店するかもしれないけど、その場合でも最低限の設備で大丈夫。もしオーダーメイドやここの設備で修理出来ない場合は、本店に行ってもらう事になるからな。」


武具については量産品を売る事にする。

もし高ランク冒険者なんかが武具を買いに来た場合は本店に行ってもらう事になるけど、その場合でもどこに行けばいいのかわかるように案内所も作るようにする。


案内所は無料にするし、そこで働く人の賃金なんかもホット商会で負担する事になるけど、モールの店舗家賃で充分過ぎるほどの収入があるので問題ない。


遊具や一時的な子供の預かり場なんかも作るようにする。

お金を使うのは人だ。

その人を呼び込むのが目的だからな。

サービスは多い方がいい。


安全面も考えて警備兵も雇う事にする。

引退した冒険者を雇ってもいいし、危険も少なく安定した収入があるのだから雇う人に困る事はないだろう。


「イメージ的には1つの建物の中にいくつかの店舗を設営できるようにする感じだな。そして建物を食料品を扱う建物とその他で分ける。そして食料品を扱う所には外で食べれるような屋根付きの机や椅子を用意する。そしたらどの店で買ってもそこで食べれるからな。」


「なるほど。店ではほんまに買うだけって事やね。それやったら入り口にどの店がどこにあるのかわかるように、看板なんか設置しといたほうがええやろうね。」


「確かにそうだな。あとは出店する店舗だけど、沢山の店に声をかけてくれ。土地さえあればいくらでも作れるからな。洋服や武具については並べ方や見せ方があるだろうから、その辺の細かいところは店の代表にも話す必要があると思う。ホット商会が提供する間取りのまま使うならいいが、もし変更する様であれば料金が発生する形になるからな。」


ホット商会としてはもちろんメインの食品関係と遊具の売り上げで利益を得るつもりだが、モールでの出店者が増えて店舗家賃が増えれば、それはそれで収入となる。

その為には全てとは言わないが、必要な物がある時にここに来ればほぼ購入する事ができる。

そして困った時にわかりやすいサービスの導入が必要だ。


異世界では普通にあると思われるショッピングモールだが、この世界にはその発想はない。


俺も異世界の知識で知る事がなければ作ろうとは考えつかないだろうからな。


この世界で最初に取り組むのがホット商会だから、成功するか失敗するかはわからない。


だが異世界で成功してるんだ。

多分なんとかなるだろ。


「それじゃあ、うちはアースンを治めている領主と話をしてくるわ。できれば今後も店舗を増やすとして、広めの土地を購入したいと思うてるから。出店する店舗への声かけはホット商会の商人にさせておくから、マルコイさんはわからない事があったら連絡するんで居場所だけ宿に伝えといてね。」


「ああわかった。ところでセイルズの店にも声をかけるのか?」


「もちろんそのつもり。食べ物だと地域での特産なんかもあるから、たくさんあったほうが面白いやろ?」


そうだな。

でもセイルズに声かけすると、もれなくタルタルがやってきそうで怖いのだが‥


「そういえばポーション関係についてはセイルズのオマールさんがこっちに来てたから声かけたらいいんじゃないか?ホット商会の人だし。」


「そうやね。確か一緒の船に乗ってたんよね?声かけさせてみるわ。」


よかったなオマールさん。

またしても大きな仕事が舞い込んできそうだぞ。


「あとマルコイさん。話を聞いてたら少し期間が延びそうやから、宿の方はあと1〜2週間くらい延ばしてもらったがええかもしれない。」


「それは構わないぞ。宿とみんなには俺から言っておくよ。」


「ありがと。思ってたん以上に大きな仕事になりそうやから、ちょっと力を入れさせてもらうわ。多分ここだけじゃなくて、他の街にも造る事になると思うからね。」


相変わらず仕事してる時のキリーエの顔が生き生きしてるな。

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