第408話

「す、すみませんすみません。つい興奮してしまいました。」


「頼みますよ‥」


オマールさんは何回も頭を下げている。


「ところでオマールさんは何故また船に乗ってるんですか?前回は自分たちの商会に味方してくれる人を探しに行ってたって言ってましたけど、確かナイコビ商会は廃業したんじゃないですか?」


正確には壊滅させたんだけどね。


「ああ。マルコイさんの耳にも入ってましたか。そうなんですよ!実はロンギルの商会を悩ませていたナイコビ商会がなんと衰退したんですよ。なんでも商会長が急に行方不明になったみたいで、引き継ぎも出来ずに商会として機能しなくなったそうです。ああすみませんすみません、そんな事マルコイさんなら知ってありますよね。」


そっか。

まあ商会長だったサントバルがいなくなればそうなるわな。


「それじゃあ尚更なぜ船旅を?確かポーションを売ってあると言われてたんで、薬草の買い付けとかですか?」


「それがですね‥ここだけの話ですけど、実はうちのロカット商会は、巷を席巻しているホット商会の傘下にしていただいたんですよ!マルコイさんも知ってらっしゃるでしょ?ホット商会!ああすみませんすみません。」


え、ええ。

大いに知っております‥


「真面目に仕事をしてきたのを神様が見ててくれたんでしょうね。うちを使いっ走りにしていた商会は中規模だったんでプライドがあったんでしょうね。ホット商会には入らなかったみたいですけど‥」


「案の定その商会は衰退しましたよ‥」


ふ〜ん。


「それで自分を使いっ走りに使っていた商会が潰れてよかったなって?」


「そうですね。少しはそう思いましたけど、やっぱり恩もありますからね。どうにかホット商会に入れてもらえないかホット商会にお願いに行ったんですけどね‥」


はは。


まあオマールさんは人が良さそうだ。

とても見捨てることが出来なかったんだろうな。


「結局私が声をかけた時には借金で首が回らない状態になってまして、そんな状況ではとてもホット商会には入れないとの事で潰れました。まあしょうがないから借金肩代わりして、うちで雇って借金返済するために働いてもらってますけどね。ああすみませんすみません関係ない話まで‥」


お人好しだね、まったく。


「まあそれはいいんですけど、まだお会いした事ないんですけど、キリーエ副会長さんがポーションを大量に購入したいとの事で、うちに話が回ってきたんですよ。それでせっかく頂いた機会なんで最高の品物をご用意して副会長にアピールしたいと思ってるんですよ!」


さ、さすがキリーエ。

人の扱いもお上手ですな。


新しく傘下に入った商会はオマールの商会のように商会が小規模なところもある。


そこに大量に発注をかけてお金を回すと同時に、ホット商会から期待されていると思わせる。


そりゃ〜頑張りますよ。

ホット商会に入って金回りがよくなって、期待されているんだって思ったら。


だって、あの常に下手に出ていたオマールさんが鼻息荒く、ふんすふんす言ってますもん。


ちなみに俺が会長ですなんて、とてもじゃないけど言える雰囲気じゃなくなりました。


「そうですか。それはよかったですね。頑張ってホット商会に貢献されてお店を大きくしてくださいね。」


「はいありがとうございます!これからロンギル共和国で、ホット商会はもっともっと大きくなっていきますからね!マルコイさんも、もしロンギル共和国で仕事をされたい時は言ってくださいね。多少はホット商会の中で発言権があると思いますから!ああ、すみませんすみません。マルコイさんみたいに強い冒険者の方には余計なお世話でしたね。」


俺はお飾り会長ではあるが、こういった人に頑張ってほしいと思う。

ロンギルを離れる事になるけど、こんな人がいるなら大丈夫だろ。


それに俺が心配しなくても、キリーエはしっかり考えて動いてるみたいだし、そのうち商売で世界征服するからな。


大魔商人キリーエさん爆誕するだろ。

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