第407話

ちょうど頭に当たって意識を失い、海に沈んだのがよかったんだろう。


もし意識があったら多分身体ごと吹っ飛んでいたと思う。


よかった。

本当によかった。


これで全て吹っ飛ばしていたらミミウが泣きそうだ。


いや多分泣く。


クラーケンが出るのをあんなに楽しみにしていたんだ。


俺の攻撃のせいでオクトパスが食べれなくなったとしたら、どんな反応をするか想像したくない。


食べ物の恨みは怖いのだ。


俺はオクトパスを『スペース』に入れて、すぐに甲板に戻る。


「ミミウ。実はタコは頭は食べれないんだ。でもさっき倒したオクトパスは頭は少しなくなっていたけど、ちゃんと食べれる足は全部残ってたぞ。」


今日から料理用で買うタコは全て頭は食べられなくなりました‥


「わーい!やったですぅ!タコさん料理が食べられますぅ!」



おう‥

今回は俺が全面的に悪いからね。


たくさん作らさせていただきます。


「あ、あれ?オクトパスはどこに行った?」


甲板の人が騒ぎ出している。


そして1人のおじさんが俺を指指して何か言っている。


「あ、あんた今海の上を走ってなかったか?」


ちっ、さっき海の神様がって言ってたおじさんか‥


「はい?俺はずっとここにいたけど?おじさん疲れてるんじゃないか?それとも海の神様でも見たんじゃない?」


必殺すっとぼけてみる。


「そ、そうか‥疲れてるのかな。確かに君とそっくりな人が海の上を走ってたように見えたんだけど‥」


「よっぽど疲れてるんだろ。人が海の上を走れるわけないからな。いい疲労回復のポーションを持ってるぞ。安く譲ろうか?」


「い、いや、大丈夫だ。ありがとう。」



「あっ!すみません。もしかして貴方はマルコイさん!また会えるなんて光栄です!もしかしてさっきのオクトパスは貴方が!?」


商人の格好をしたやつが俺の名前を呼びながら、此方に向かってきた。


確かロンギル共和国に向かう時の船であった商人だ。


確か名前はオマールだったか?


「そうか!マルコイさんがいたなら納得です。すみませんオクトパスが出るなんて、なんてついてないんだと思いましたが、マルコイさんが乗っていたならついてました。あのクラーケンをたおし‥」


『スクレイプ』


俺は駆け寄ってきたオマールの背後にある小さな樽とオマールの間に『スクレイプ』を使用する。


するとオマールは後ろに引っ張られ、飛んできた樽が頭に直撃する。


危ない危ない。


船上は逃げ場がないからな。


悪目立ちすると、行きの船のように自分の娘をすすめてくるような輩が現れないとは限らない。


悪いがオマールには黙っていてもらおう。


「いててて‥なんでいきなり樽が飛んで来たんだ?」


オマールは甲板に転がってる樽を拾いながら呟く。


俺はオマールの両肩をがっしりと掴む。


「さあ。風でも吹いたんじゃないかな?まあそれはいいとして‥オマールさん。少し話があるからちょっと隅の方にいいかな?」


俺からのただならぬ重圧を感じ取ったのかコクコクと頷くオマールさん。


別にそんな脅したりするつもりはないんだよ。

ちょっとお話がしたかっただけなんだよ。


「オマールさん。俺この間クラーケンを倒した時に目立ってたじゃないですか?」


「はい。すみませんが物凄く目立ってました。まるで昔話に出てくる英雄のようでした!」


「はいありがとうございます。しかしですね‥そのおかげでその後の船旅で沢山の人に絡まれまして‥とある人は自分の娘まで差し出そうとする始末。せっかくの船旅なので帰りの船はゆっくりと過ごしたいんですよ。わかってくれます?」


何も発さずにコクコクと頷くオマールさん。


よかった。

俺の誠意が通じたようだ。


「よかった。それじゃあクラーケンの件は内密にお願いします。」


「わ、わかりました‥それじゃあオクトパス倒したのは‥?」


「そうですね‥俺です。これも内緒にしてくださいよ。」


「やっぱり!そうだとは思ったんですけど、さすがクラーケンにつづい‥」


俺は慌てて口を塞ぐ。

こいつ‥

羽根人形つけてロンギル共和国に送り返してやろうか‥

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