第406話
何故か納得のいかない結果になってしまったが、まあいい。
「それじゃとりあえず帰るよ。」
「ああ。道中気をつけてな。もし盗賊にあっても実験台にするんじゃないぞ。」
エルエス兄さんは俺の事をまだ人族と認識しているのだろうか?
怪しいところである。
「タルタル神様。この国にタルタル神様の教えを広めます。そして私も必ずタルタル神様のいるお国に渡らせていただきます。それまで少しの間ですがお別れさせていただきます。」
うん。
もうすでにフーラさんが何を言っているのかわからない。
タルタル教ってなんだよ‥
「ま、まあ頑張ってください。」
「マルコイ!」
お、今日も可愛い格好のライリーさん。
「こっちに来たら必ずギルドに顔を出してくれよ。」
「ああわかった。あともしこの国に勇者が来たら取り繕わなくていいからな。ありのままのライリーを出すんだぞ。」
「よくわからないけど‥マルコイが言うならわかった。」
よし。
これで正人も喜ぶだろう。
「それじゃあまた。」
俺たちはロンギル共和国に別れを告げて獣人国への帰路についた。
まあ帰路についたとか言ってすぐに船にのるんだけどね。
船上から皆んなに手を振り別れを告げた。
ここからまたしばらく船上の旅だ。
来る時はクラーケンに遭遇したけど、あんなモンスターはそうそういるものじゃないからな。
帰りも遭遇するとは思えない。
「クラーケンさん出てこないですかね‥」
ミミウさんが期待の籠った縁起でもない言葉を放っている。
食べたいのはわかるけどやめなさい。
まだ地竜の肉も残ってるしクラーケンは大きいから入らないかもしれないぞ。
それにそんな事を思ってると本当に出ちゃうからね!
そして翌日の航海は途中まで快調だったのだが‥
やっぱり何か出た。
甲板で人が慌ただしくしている。
「オクトパスだーっ!オクトパスが出たぞー!」
俺たちが甲板に出ると水平線から何やらウニウニした物が近づいてきている。
ん〜‥
タコのモンスターだな。
クラーケンよりは小さいようだけど、ここってこんなに大型の海洋モンスターが出ていいのかね?
もしかして横で「食べれるですか?」とか聞いている娘が引き寄せてるのかな‥
モンスターまでかなり距離はあるけど‥
エンチャント:獄炎とスキル【投擲】で届かないかな?
思ったら、即実行。
魔力の小手を嵌めて魔力供給。
そして特製木偶爆弾を袋に詰める。
一応火は木偶爆弾の中で燃えるけど、外側は木だからね。
湿ったら威力が落ちるだろうし。
エンチャント:獄炎を発動させる。
目標、オクトパス的なモンスター!
木偶爆弾を力強く放り投げる。
木偶爆弾は真っ直ぐにオクトパスに向かって突き進んだ。
そして狙い通りオクトパスの頭に直撃する。
するとオクトパスがふらっとしたかと思えばそのまま木偶爆弾と共に海に沈んでいく。
おいおい。
もしかして木偶爆弾の直撃で意識飛ばしたのか?
そして‥
水柱が上がった。
オクトパスの大きな身体より遥かに大きな水柱だ。
「ああ‥せ、世界の終わりだ‥海の神様が怒ってらっしゃる‥」
横で船員さんだと思われるおじさんがそんな事を言っている。
すいません‥
犯人は自分です‥
いやまさかあんなに大きな水柱が立つとは思ってませんでした。
確かに荒野で使った時の威力はすごかった。
でも水の中ならそこまでないだろうと思ったんだけど‥
少し火薬を増やしたのが原因だろうか‥
「マルコイさん‥‥」
うんミミウどうし‥
「マルコイさん‥タコさんもう食べれませんか‥?」
「とうっ!」
俺はすぐに人目のない場所から海上に降りて海の上を駆け出した。
やばい。
今回はあんまり目立たないようにと思って遠距離から攻撃したんだけど、まさかこんな結果になってしまうとは!
駆けつけて海面を見ると頭の大半を失ったオクトパスが浮かんでいた。
よかった。
食べれるところが残っているみたい‥
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