第392話
「そんなんじゃアキーエちゃんもヤキモキしてるだろ?」
「何の事だ?焼き焼きはよくされてるぞ。」
特に頭だけど‥
「い、いや焼き焼きはよくわからんけど、まあそんなとこも含めてアキーエちゃんはついてきてるんだろうな。よかったなマルコイ。アキーエちゃんみたいな娘がいてくれて。」
「アキーエにはいつも助けてもらってる。感謝してもしきれないくらいだ。でも他のパーティメンバーにもすごく助けられてる。俺は仲間がいなかったらここまでこれなかったと思うしな。」
「そうか。よかったな仲間に恵まれて。」
「ああ。でもエルエス兄さんも楽しいんじゃないのか?副団長になるくらいだからな。」
「まあ楽しいのは楽しいよ。男ばっかりなとこはつまらんけどな。でもお前に言った通り、俺も少しは強くなれたからな。副団長に恥じないような行動を一応心がけてるよ。」
親父さんに聞かせてあげたいよ。
あなたの息子は一応立派に育ちましたと‥
「そういえば強くなったって言ってたな。確かエルエス兄さんのスキルは‥」
「俺のスキルは冒険者ギルドで登録してから進化もしてないよ。でもスキルのレベルや俺の魔力が上がったおかげで戦えるようになった。俺のスキル【投擲】と【二重化】の相性がよかったからな。」
エルエス兄さんのスキル【投擲】はそのまま投げる事に対しての身体能力を上げる。
そしてスキル【二重化】は対象物を二重にする事が出来る。
そう二重化するのだ。
対象に対してスキルを使うとそれが何と2つになるのだ。
これだけ聞くと素晴らしいスキルに思える。
スキルを発現した時に父親がものすごく喜んだのを覚えている。
これで高価な物を2つにして売ったらいいんじゃないか!と。
まあしかし欠点はある物で、2つにした物は時間の経過で消えてしまうのだ。
その時の父親の落ち込んだ顔といったら‥
そんな顔されたら子供グレるぞくらいの顔だった。
そして2つ3つ二重化したら魔力が尽きるといった事もあり、役立たず認定されていた。
しかし確かに冒険者や傭兵としてなら活躍できそうなスキルである。
「村では俺のスキルを使う場面はなかったけど、戦いの場であれば投擲し放題だからな。」
そっか。
確かに投擲する物を1つ持っていれば、後はそれを二重化する事で投げ放題だ。
それに時間が経てば消えるので投げた相手に武器として使われる事もない。
「エルエス兄さんはまだ冒険者のギルドカードは持っているのか?」
「ん?そうだな。傭兵としての登録カードはあるけど、国の移動なんかは冒険者のギルドカードの方が便利だからな。一応持っているぞ。それがどうした?」
「よかったら見せてもらえない?」
「別に構わないぞ。」
そう言ってエルエス兄さんはギルドカードを取り出す。
エルエス
冒険者ランクD
スキル【投擲Lv.8】【二重化Lv.7】
おお。
確かにかなりスキルレベルが高い。
冒険者ランクが低いのは冒険者として活動してないからだな。
「すごいな。本当に努力してたんだな。」
「おい。そうじゃなければどうやって副団長になったと思ってるんだよ。」
「運?」
「お前なぁ‥見てろ。」
エルエス兄さんはそう言うと手に持っていた食べ物が刺さっていた小さな木の串にスキルを使用した。
木の串が俺の見てる前で2つに増える。
「これが【二重化】で、これを【投擲】する。」
そう言ってエルエス兄さんが投げた木の串は近くにある木に刺さった。
軽く投げたんだろうけど、木の串は半分以上木に刺さった。
こりゃすごい。
これで槍なんかを二重化して遠くから投げられたらそりゃ悪夢だな。
しかも魔力が続く限り投げ放題とか‥
(ピコーンッ)
『模倣スキルを発現しました。スキル【二重化】を模倣しました。スキル【投擲】は譲渡しています。スキルを模倣できません。』
ありがたい。
エルエス兄さんのおかげで希少なスキルを模倣する事ができた。
【二重化】で木偶爆弾を2つにして投げて爆発させ放題。
もうやばい臭いがプンプンするスキルだな‥
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