第385話

家に着くと流石にみんな疲れていたのか、装備を外してから自分の部屋に戻っていった。


アレカンドロの家にはお湯に入る設備があるのだが、今日はお湯の中で寝てしまう恐れがあるのか皆んな身体を拭いてそのまま寝るようだ。


ミミウはテーブルに座って寝たままご飯食べてるけど。


たとえ脳が睡眠を要求していたとしても、身体が必要としている栄養を得る事が出来る。

よく考えるとすごい特技だ。

実はミミウの隠れ固有スキルとかじゃないだろうか?


まあそれはさておき、少しだけ元気な俺はお湯に入る。


あまり貯めたお湯に入るって習慣はなかったんだけど、異世界の知識ではほとんどの人が入っているみたいだし実際入ってみるとすごく気持ちがよかった。


俺以外もみんな気に入って入っている。


獣人国に戻ったら獣人国の家にも作るとしよう。


しかし間違いなく正人の知識なんだろうけど、お湯に入る設備で必ず起こるはずのラッキーは未だにない。

これについては正人を問い詰める必要がある。

正人よ覚悟しておくがいい。


しかし今回は『アウローラ』にも被害が出なくてよかった。

多少の傷は受けたみたいだけど、ポーションで治る程度の傷だったからな。


それに『あのお方』とやらについてもかなりの情報を得る事ができた。


『あのお方』は魔族だから、魔王と共に多分正人たちが頑張って倒してくれるはず。

‥‥‥と思う。


そのために必要な物があれば援助しよう。

お金だろうと装備だろうと。

今はお金もあるしな。

俺のお金じゃないけど‥


だが狙われる可能性があるのであれば情報はあった方がいい。


極力関わりたくないけど、何故かいつの間にか関わってるし向こうの恨みも買ってそうだ。


大体魔族なのに魔王みたいに魔族以外の種族は排除だっ!みたいならわかるけど、人を国に潜ませてその国を支配しようと企んでるなんてわかるはずがない。

相手が『あのお方』関連の奴だってわかった時点ではもう後戻り出来ない状況になってるからな。


今の時点で神聖国とか帝国の中核にも息のかかった奴がいるかもしれないって事だよな。


全く厄介極まりない。


仲間が死んだら、その仲間が持っていたスキルを奪って別のやつに渡す。

渡された奴は自分のスキルと渡されたスキルを使う事ができる。


もしそいつが死んだら、今度は2人分のスキルが新しい仲間に渡される。


何かしら制限があるのかもしれないけど、1人の魔族が恐ろしい程のスキルを持つ事になるかもしれない。


そんなのにいくら勇者でも勝てるかどうか‥


もし正人たちに会う事があったら俺のその時点で出来る最高の魔道具や装備を渡すとしよう‥


後は‥


もし俺や仲間に被害が及ぶようであれば全力で撃退する。

できれば仲間を危険な目に遭わせたくないけど、こちらを標的にするようであれば話は違う。

そのためにももっともっと強くならないとな。


俺のスキル【模倣】はまだ成長できるはず。

それに『魔力供給』のように魔道具を使っても強くなれるはずだ。


これまではみんなが強くなるのを見守っていたけど、これからは強くなるために色々準備をしていこう。







あまり長くお湯に浸かっていたので、少しのぼせてしまった。


お湯の中は考え事をするのにはいいが、あまり長く浸かると体調によくないようだ。


俺はお湯から上がり身体を拭く。

冒険者になりたての頃に比べると筋肉もついた。

傷はエンチャントを覚えてからは治せるようになったけど、それまでの傷は残っている。


アレカンドロは俺は戦いの場に常に身を置いているなんて言ってたけど、そんなつもりないんだけどな‥


出来ればみんなで日々平和に過ごしたいと思ってるんだけど。


でも魔王や『あのお方』とやらがそうはさせてくれないんだよな。


もっと鍛えないと!


そう思い身体を拭いた状態で立っていると、着替え場の扉が開いた。


そして扉を開けた服を着ている人物と目が合う。


視線は自然と下の方に向かっていく。


「キャーーー!」


アキーエは大きな声を上げると逃げるように走り去った。


正人よ。


俺が望んでいたラッキーはこれではないぞ‥

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