第381話
「新たなスキル?馬鹿げた事を言うな!そんな物最早神の所業ではないか。『あのお方』はその身体に先の大戦の仲間達のスキルを宿しているのだ。それを新たな僕である我らに分け与えてくださってるのだ。」
ほっ‥
よかった、とりあえず魔族版の爆殺の名を冠する者の影に怯えなくてもよさそうだな。
しかし‥先の大戦?
一体なんのことだ?
俺が産まれてからそんなに大きな戦いはないはずだぞ。
もしかして先代の魔王でも生き残っているのか?
まさかそんなはずはない。
魔王が勇者に討ち取られたからこの世界はまた平和になったんだ。
「先の大戦とはどういう事だ?」
サントバルは少し考える様子を見せる。
「ふむ。少し話過ぎたようだな。先程言った通り『あのお方』なら例え屍からでもスキルを得る事ができる。たとえ相討ちになったとしても、俺を倒した事が伝わり相手を探し出してスキルを得ていただけるだろう。」
サントバルの歪だった両腕が2本とも剣を形取る。
「貴様はまだ強くなるのか?もしそうなら見せてくれ。貴様の力がそのまま『あのお方』の力になるのだ。これ程昂る事はない。」
まるで狂信者だな。
サントバルは此方に向かい駆け出した。
残念だが、お前にこれ以上付き合うつもりはない。もう終わりにしよう。
俺はエンチャントの暴風、爆炎、土塊、活水を同時に発動させる。
第一段階の全エンチャント発動と同じように俺の身体を白い光の膜が覆う。
俺のいる場所を中心に、力が波打つ。
やはりエンチャント第二段階の全発動は身体の負担が大きい‥
力が籠り過ぎて身体が震える。
すぐに力を解放しなければ身体が四散しそうだ‥
「これで最後だ。『エンチャント:万雷』!」
稲光が走る。
エンチャント:雷とは違い、俺自身の身体が雷になったように錯覚する。
サントバルが両手の剣を振り下ろしてくる。
その動きがとても遅く流れる。
俺だけが違う速度の世界にいるようだ。
一歩踏み出す。
周りの空気が身体にまとわりつく。
手に持つ剣をサントバルに振る。
その剣にすら空気が抵抗しているように感じる。
その空気を突破すると俺の身体はサントバルの横を通り過ぎていた‥
サントバルが此方を振り向く。
するとサントバルの身体から血飛沫が飛び散った。
サントバルの身体は胸の半分ほどが斬り裂かれていた。
「ふはははは‥まさかこれ程の力を持っていようとはな。」
サントバルの身体から溢れ出た血は地面で蠢いている。
身体に戻ろうとしているようだがある程度動いたところでその動きを止めた。
「くそ‥もうスキル操作もままならんか‥」
もうサントバルはスキルを操作する力もないようだ。
だがサントバルは魔族だ。
俺はとどめを刺すためにエンチャント:光を発動させる。
「ふん。それがガルヘアにとどめを刺した光の属性か‥だが俺には必要ない。」
「必要ない?お前は魔族だろう?悪いが光属性でとどめを刺させてもらう。お前をこのままほっておくわけにはいかないからな。」
「何を勘違いしているかしらんが、俺は魔族ではない‥俺はお前と同じ人間族だ。だから先程受けた傷で死ぬから心配するな。」
なんだと?
「はは!驚いたか!最後に貴様の驚いた顔を見れて俺は満足だ!勝手に俺の事を魔族と思ってたようだが残念だったな!『あのお方』の思想に感化されて『あのお方』について行こうとしているやつは魔族だけではない!人間族はもちろん獣人族もいる。エルフやドワーフもな!これからは魔族以外もお前を襲うだろうな!いや、俺を倒したんだ。それこそ他の四死天にも狙われるし『あのお方』にも狙われるんだ。お前に安息の日はないのだ!」
まさかサントバルが人間族とは思わなかった。
一体『あのお方』とは何者なんだ?
魔族だけではない?
それだけカリスマ性を持っている奴なのか?
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