第380話

俺の時空魔法での転移は戦闘中に使用する事は難しい。


それは転移するために魔力を込めた目印となるものを置いておく必要があるからだ。


しかしただ目印となる水晶のような物をばら撒いたところで相手に警戒されるのは目に見えている。


どうすれば不自然にならないように目印を配置する事ができるのか?


そこで考えたのが木偶人形の人工核を目印にする事だった。


攻撃を仕掛けてくる木偶人形であれば壊すだろうし、爆発すればそれに巻き込まれる。


壊してしまったらそれに対する警戒は解かれる。

ならそこに転移すれば相手に警戒される事なく転移ができ、戦闘中でも使えるのではないかと。






「ぐがっ!」


両手を斬り飛ばされたサントバルはよろけるように後退した。


斬られた両手から飛び散った血は地面を這いずるように動きサントバルの手元に戻っていく。


そして失われた腕を補うように腕を形取る。


血の腕は元の腕を完全に再現する事なく歪な形状になってはいるが。


「ぐっ‥き、貴様‥貴様は一体いくつのスキルを持っているんだ!それに空間を移動するなど『あのお方』ですら不可能のはずだ!貴様は一体なんなんだ!」


なんなんだと言われてもな‥


「ほう?『あのお方』とやらは【時空魔法】は持っていないようだな。」


「【時空魔法】だと?そんなユニークスキルを持っているのか!そんな貴様しか持っていないようなスキルなど例え『あのお方』であっても持たれていないだろう‥奪う対象が貴様しかいないのであれば‥」


サントバルはそう言い放つと項垂れる。

しばらくするとサントバルの肩が震えだした。


「ふはは‥はっはっは!そうか!貴様はユニークスキルまで持っているのか!出来れば俺が献上したかったが‥それは叶わないかもしれんな。だが四死天の俺を倒せばお前は『あのお方』の目に留まる。いや‥もしやガルヘアを倒したのはお前か?」


「そうだとしたら?」


「はーはっは!そうか!ならばもう標的にされているだろう!『あのお方』が更に力を手に入れられるのならば俺はそれでいい。出来ればお側で見ていたかったがな。」


高く笑い声を上げるとサントバルは俺を見ながらそう告げる。


「勝手なことを言うな。俺の力は俺と仲間の物だ。『あのお方』とやらにやるつもりはない。」


「ふん。『あのお方』勝てる奴などおらんよ。俺のいただいたスキル【マニュピレイト】も俺が死ねば『あのお方』に戻る。『あのお方』は無数のスキルを持つ。それこそ10や20じゃすまないほどな。貴様も多くのスキルを持っているようだが数が違う。たとえ貴様が死んだとしてもスキルは奪う事ができる。貴様のそのスキルを献上できるのだ。貴様の死は無駄にならんから安心するがいい。」


ふざけた事を。


しかし10や20じゃないだと?


しかも話している感じではすべて普通のスキルのようだ。

それにサントバルはスキル【マニュピレイト】をいただいたと言っていた。


確か【鑑定】で確認した時に【マニュピレイト】にはレベルが表示されていた。


もし模倣スキルならレベルは表示されないはずだ。


早計かもしれないが、おそらく『あのお方』とやらが持っているのは【模倣】ではなさそうだ。


それだけで多少ながら安心できる。


自分で言うのもあれだが、権力を持ってる人が【模倣】を持っていたらとんでもない事になる。


スキルを隠す必要もなく、強制的にスキルを模倣し放題だからな。


『あのお方』のスキルが【模倣】だったらと思うだけでゾッとする。


だが俺はもう一つだけサントバルに確認する事がある。


「お前がいう『あのお方』はスキルを‥新たなスキルを作り出す事ができるのか?」


既存のスキルなら対応できるかもしれない。

おそらく『あのお方』は自分が支配する魔族のユニークスキルも持っているだろう。


だがスキルを集めて新たなスキルを作り出す事ができるのであれば俺の【模倣】では対処できないかもしれない。




だってアキーエとかミミウとかアレカンドロみたいな規格外のスキルを持った奴なんて勝てると思えないからな‥

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